# 6/30 国際関係論ゼミ ###### tags: `2021-2Q` ## 進捗発表 2021/6/30 20B 藤井 ### はじめに これまでの進捗発表では主に日本国における財政赤字についてや、MMT理論に反論する方策などについて扱ったが、財政赤字を実際に改善するにあったて歳出削減をとるべきなのか?それとも歳入増加(=税収増加)を行うべきなのか?といった政策提言的な側面をもつ考察を行なってこなかった。そこで、扱う内容が増え、雑多な構成となるが、今回は歳出削減を行うとすればどの箇所を削減するべきかという判断の際に必要となりうる知識のうち私が最近学んだものを中心に扱う。(ただし、どこを削減するべきなどの「べき論」に陥ることのないように心がける。あくまでも判断の元となる知識の整理と、関連する話題について取り扱う。) :::info ### 目次 - 歳出内訳概観 - 社会保障関係費について - 社会保険 - 公的年金 - 教育関連費 ::: ### 歳出内訳概観  > 財務省 日本の財政の状況より 財政健全化を行うべきかどうかについては今回の進捗発表では扱わないこととする。以下では、財政健全化を行う必要があるとの前提の上で、歳出削減を行う場合にどの項目に着目するべきか?という観点から議論を進める。また、地方交付税交付金等の項目についてはここで議論するだけの知識を私が有していないので今回は扱わない。(現在、『地方財政論入門』で勉強中) ### 社会保障関係費について  > 2020年度 社会保障関係費予算内訳 社会保障制度について財政学では大きく分けて2つの理由から議論の対象となる。 1つ目は、憲法第25条により「すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」ことが定められているため、社会保障の提供は程度の問題こそあれ政府のなすべき義務であるとの理由からであり、2つ目は財政の3大機能の1つである所得再分配を行う手段として社会保障を考えるからである。しかしながら、国庫を圧迫するほどに肥大化し持続可能性が疑われる公的年金制度や国民健康保険制度自体を現状のまま放置することは、財政健全化が必須との立場であればありえないことである。以下では、まず社会保険について概観したのち、社会保障関係費のうち全世代が(給付金等を受け取るという意味での)被保険者ではないにもかかわらず最も大きな割合を占めている公的年金について扱う。これは、社会保障関係費の増加を詳細に把握する上で必要な手続きであると私が考えたからである。 ### 社会保険 まず、保険について簡単に触れる。 保険:「将来に起こるかもしれない損失に備えて事前に契約を結び、不運に襲われ、損失が発生する場合に何らかの補填を受ける措置 」 社会保険とは、民間部門ではなく、公的部門により強制的な料金体系を伴って供給される保険のことを指す。以下では、一般に保険が存在することが各個人の厚生を増加させる理由について簡単に扱う。 #### 数式的表現 所得$y$から効用$U(y)$を得る個人が$N$人存在する社会で、所得$y$の値が、確率$p$で高所得$y_H$、確率$1-p$で低所得$y_L$の所得に変動する場合を考える。二項分布を考えると、$pN$人が$y_H$、$(1-p)N$人が$y_L$の所得を獲得するから、社会全体では$pNy_H+(1-p)Ny_L$の所得を獲得し、1人あたりでは$py_H+(1-p)y_L$の所得を確保する。 ここで所得は不確実なため、期待効用を用いて個人の厚生は、 $$E[U(y)]=pU(y_H)+(1-p)U(y_L)$$ と表せる。ここで個人がリスク回避的であるならば、所得が不確定な状態すなわち$[pU(y_H)+(1-p)U(y_L)]$よりも、所得の期待値を確定的に確保できる状況$[U(py_H+(1-p)y_L)]$を好むはずなので、効用関数は以下のようになる。 $$[U(py_H+(1-p)y_L)] > [pU(y_H)+(1-p)U(y_L)]$$ これを図に表すと以下のようになる。(財政学をつかむより)  ### 公的年金 #### 公的年金の財政方式 1. **積立方式** 若年期に払い込まれた掛け金が積み立て・運用され、その基金が老年期の給付に充当される仕組み。この仕組みであれば、ある世代が払い込んだ掛け金は他の世代の年金給付に充当されることはなく、世代間資金移転は発生せず、現在問題となっている少子高齢化状態でも、当該世代内で年金を完結させることが可能となっている。 2. **賦課方式** ある年度に払い込まれた掛け金はその年の老年退職世代の年金給付にそのまま充当される仕組み。名前の由来は、ある年度の老年世代の給付に必要な資金は、その年度の若年世代に賦課する方式から。当然、世代間の資金移転が発生する。現在の公的年金制度は**事実上**この形なので、受給世代たる老年人口の増加と掛け金を納付する労働人口の減少が同時に発生すれば給付が行き詰まる。 #### 日本の公的年金制度の変遷 戦前の恩給制度から始まったとの言説も存在するが、戦後の公的年金は当初、積立式として発足したが、オイルショック後の急激なインフレーションを受けて、年金給付額の大幅な改訂を行なった。これを受けて、修正積立方式と呼ばれる、将来の給付に完全に必要な積立金満額を保有するわけではない制度に移行し、徐々に次世代から前世代への掛け金の移転が増加し、2010年代には事実上、完全な賦課方式へとシフトした。(いつを賦課方式へのシフトとみるかはさまざまな説あり) ### 教育関連費 #### 現状 政府支出に占める教育費(文教及び科学振興費を除いたもの)は$8$%程度であり、減少傾向にある。また、日本の教育に対する公的な支出水準を児童・生徒あるいは学生1人あたりで比較すると、初等中等教育ではOECD各国のほぼ平均であるものの、高等教育ではOECD各国の平均を大きく下回っている。 #### 批判 教育費を増加させる、もしくは義務教育以外の事柄への政府支出に対する批判が存在する。まず彼らが依拠する考えを理解するために、人的資本論とスクリーニング論を扱う。 1. **人的資本論** 人的資本論は、教育により個人の能力が高まり、労働生産性が向上すると考える。そのため、教育を長く受けた人ほど、高い生産性を実現していることになる。これは、企業が利潤最大化行動をとっているならば賃金率は労働の限界生産性と等しくなるはずなので、学歴別に賃金を比較した際、大卒者が高卒者よりも高い賃金を得ていることから裏付けられる。 2. **スクリーニング論** 高学歴なものほど高い賃金を得ているが、これは教育の効果ではなく、もともと能力の高いものほど高等教育機関に進学するという結果を示しているだけにすぎず、教育は人的資本を高めるのではなく、人々の能力を顕在化させ振り分ける働きをもっているにすぎないという議論。 このスクリーニング論者は、政府が教育に関与することを以下のように批判する。 `高等教育は、スクリーニング効果しかないのだから、パレート最適になるのは、個人が教育のための限界費用と教育からの限界便益が等しいところまで自発的に教育を需要すればよく、政府の介入はこれを歪めている。` これに対して、人的資本論は教育の効果の外部性から以下のように反論する。 教育の効果には外部性が存在し、以下の図のように最適な状態にするには政府の介入が必要とされると主張する。  > 財政学をつかむ より すなわち、政府の介入がなければ教育の限界便益MBと限界費用MCが等しい$E_1$で$Q_1$だけの教育を個人は需要するが、教育に外部経済性が存在するため教育の社会における限界便益曲線は${MB}'$で表せる。しかし、このままでは自発的に$Q_2$まで教育サービスを需要することはないので、政府が介入し補助金などを用いて、教育の費用を引き下げることで、限界費用曲線を$MC'$とする。これにより市場の失敗を是正し社会にとって最も望ましい状態にすることができる。 教育の外部性は以下のような例を考えると分かりやすい >社員全員がExcelやWordなどの基本的なソフトの使い方を知っている場合と、そうでない場合はでは仕事の生産性は大きく異なることが予想される。このように、個人の教育の成果が一緒に仕事をする社会のメンバーにも及ぶ `しかし、これはいずれも、それぞれが依拠する仮定の上での議論にすぎず、相手の主張を倒していないように感じる`
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