# RUNNING LEAN(第Ⅳ部①) ## 6章 顧客インタビューの準備 ### 6.1.1 顧客インタビューとは 顧客インタビューは、「顧客がわからないと思っていること」を引き出し、顧客の仮説検証を行うことである。 →**何が分からないのかさえ分からないことの探求** ### 6.1.2 アンケートは適切か アンケートは「こちらの想定に即した質問」に回答するものであり、「正しい質問」のアンケートの作成は極めて難しい。 また、想定を前提に項目を絞ると「その他」回答が多発したり、ボディランゲージで伝えられないため、仮説検証の手段としては不適切である。 但し、インタビューで学習した項目の検証には役立つ。(**定性的検証(学習目的)→不適切 定量的検証(サンプル数を増やした実証目的)→適切**) また、フォーカスグループは集団思考に陥るため不適切である。 ### 6.2 インタビューの会話は難しい 「建物の外に出よ」→シンプルだが難しい。 #### インタビューのポイント1(話題編) * まず何を話すか?→学習したいことを中心に!「顧客の正しい課題」を理解する。 * 顧客の「ウソ」を引き出すような誘導尋問は慎み、相手の行動から言葉を検証する。 * **相手が問題解決に必要だという言葉をいかに引き出すかが重要!** * 台本はあらかじめ考えておく! #### インタビューのポイント2(調査と対象編) * アーリーアダプターの見込みは広く!(見込みが間違っている可能性も考慮する。) * 直接面会・対象は知り合いから・複数人で行う。 * 中立的な場所(カフェ等)で会話し、十分な時間をもらう。 * 謝礼などの賄賂は厳禁。 * インタビューは録音せず、覚えているうちに文章化する。 #### インタビューのポイント3(スケジュール編) * 目標は1日1~3人×4~6週間。サンプルを増やし、仮説を確信に変える。 * インタビュー実施に伴うスケジュール調整は他人の協力を得ると良い。 ### 6.3 見込み客を探す インタビューの見込み客は知り合いからが良い。そこから「お友達紹介」の要領で広げていくと効果的である。(いいとものテレフォンショッキングみたいなw) 紹介してもらう際は、メッセージテンプレートがあると良い。 #### その他の見込み客を探す手段 * 地元のつながり(学生時代)を探す。 * 予告ページを立ち上げ、アーリーアダプターを呼び寄せる。 ### 6.4 先制攻撃と反論 顧客インタビューについては反対意見もある。これに対して→で次のように反論する。 * 顧客は「何が欲しいか」がわからない。→**想定済み。だからこそ課題をつかみ仮説検証するのである**。 * 数十人程度では優位性は無い。→**統計的には確かにそう。でも目的はあくまでアーリーアダプターの注目をつかむため。** * 定量的指標で十分。→**定量的検証の「前提条件」が正しいならの話。前提条件がわからないと話にならない。また、初期製品の顧客の行動データは不十分であることが多く、定量的指標では行動がつかめない。** * 自分自身も顧客だから話は必要ない。→**自分自身は顧客の一人であっても、顧客は自分自身一人ではない。アントレプレナーは顧客としては不適格である。** * 友達がいいねと言っている。→**友達=世界のすべてではない。そもそも身内はアントレプレナーを楽観的に捉えることが多い。インタビュー練習を友達に手伝ってもらうのは良い。** * 週末で何か作れちゃうのに、なぜ何週間もかけるのか。→**週末で満を持して作った「何か」が、ふたを開けてみれば誰も欲しがらないようでは本末転倒。小さなリリース開発も無駄になる恐れがある。プロトタイプやモックアップなどをMVPとして、ソリューションを承認してもらえればよい。** * すでに課題は明確で、テストは必要ない。→**次のフェーズへ。課題を理解して課題インタビュー→ソリューションインタビューに進む**。 * 課題が不明確でテスト不可能→**課題解決が目的ではない小説やゲームなどは、アーリーアダプターの理解よりも、予告編などソリューションをテストするほうが良い。** * 誰かにアイデアを盗まれる。→**インタビューはアイデアを話す場ではない。アイデアを実現するための課題検証が目的である。アイデアは盗まれない。** * ハイパーウェア(いつまでも予告が続いて完成しないソフト)にお金を払わない。→**まずは課題を突き付け、実用的なソリューション提案を**。 * 製品を販売したほうがリスク軽減につながる。→**インタビューの仮説検証と最低限の製品開発だけで顧客獲得が狙える。詳細は8章へ。** ## 7章 課題インタビュー ### 7.1 学習すべきこと * 製品リスク:何を解決するのか(課題をつかむ) * 顧客リスク:誰が困っているのか(顧客セグメントを検証する) * 市場リスク:競合は誰なのか(既存の代替品は何かを知る) ### 7.2 課題のテスト 課題に対する顧客の反応を計測する。(予告ページ・ブログ・広告等) →顧客が共感する課題を計測できる。但し、直面している本当の課題が解決しているかは直接聞くしかない。 計測結果や顧客観察結果をもとに課題の解決度を判断したうえで、構造化インタビューの台本を作成する。 ### 7.3 反証可能な仮説 反証可能な仮説=具体的で反復可能な行動→期待する計測可能な成果 リーンキャンバスのうち、課題(課題、既存の代替品)と顧客セグメントの項目について検証する。 ### 7.4 課題インタビューの実施 以下の流れで進める。 1. 歓迎(場の設定:2分) あいさつ→インタビューの理由→流れの説明→おことわり(売りつける意思が無いことを強調) 2. 顧客情報の収集(顧客セグメントの検証:2分) 顧客情報(家庭状況、現在利用中の既存の代替品等)を訪ねる。 3. ストーリーの伝達(課題の文脈設定:2分) これまでの開発ストーリーを要約してまとめる。 4. 課題の優先順位(課題の検証:4分) 課題を3つ提示し、優先順位をつけてもらう。(バイアスがかからないよう、提示する順序に配慮する) 5. 顧客の世界観の探求(課題の検証:15分) 現在どのように利用しているかを聞き出し、潜在的な課題を引き出す。 6. まとめ(フックとお願い:2分) 次につながるように、他の見込み客の紹介を依頼する。 7. 結果の文章化(5分) 文章にしてまとめる。 ### 7.5 課題を理解していますか? #### 課題インタビューのポイント * 結果を**週次でレビューする。** 台本調整はレビュー時に。 * **アーリーアダプターを特定**し、その他の層は排除する。 * 課題を洗練して、必要ないという強いシグナルを受け取ったものは削除し、**絶対に新しく必要なものは追加する。** * 最終的には絶対に新しく必要な **課題を一つに絞り、UVP(独自の価値提案)** とする。 * 既存の代替品の理解は、提案する**ソリューション、価格、ポジショニング**を比較する。これらを上回る価値が必要である。 * **顧客が使う言葉にこそ、UVPの「カギ」が隠れている。** アーリーアダプターに近づく経路を特定する。 * **顧客の顧客も新たな顧客。** #### 顧客インタビュー終了条件 * 最低10人以上。 * 「絶対に必要な課題」が見つかった。 * 現在の顧客の解決方法がわかった。 ## 8章 ソリューションインタビュー ### 8.1 学習すべきこと * 製品リスク:課題をどのように解決するのか(ソリューション) * 顧客リスク:誰が困っているのか(アーリーアダプター) * 市場リスク:どのような価格モデルにするのか(収益の流れ) ### 8.2 ソリューションのテスト ソリューションの「デモ」を見せ、課題が解決できているかを検証する。 顧客はソリューションを思い浮かべるのは難しいため、デモを作成する。 デモは顧客に見せる「ちょうど十分な」ソリューションが良い。 **→顧客の反応を計測し、MVPに対する要求を明らかにする。** デモで得たユーザビリティに関するフィードバックは、すぐにデモに反映する。 デモは無駄なく!最初は紙等のドキュメントで、後半はプログラムでデモをすると効率的。 デモはダミーデータよりも「本物に見える」データを用いる。(画面配置やデザインなどを工夫する。) ソリューションの反応計測は、デモ用ページの投稿やブログ記事等を用いる。検証は構造化インタビューを行う。 (リーンキャンバスはブログ記事の反響から誕生した。) ### 8.3 価格のテスト 製品価格も仮説検証すべきものの対象であるが、「顧客の本当の振る舞い」を明らかにする「絶対必要」な課題仮説と異なり、価格は「グレー」であるため、より直接的に聞かねばならない。 こちらの予想価格は顧客の予想価格より大幅に高い場合も多い。しかし、顧客「いくらなら買うか」を直接聞いてしまうと、適切な回答が得られないどころか場を悪くしてしまう。 こういう場合は「登録の障壁を下げずに上げる」手法を用いる。以下のポイントをもとにインタビューする。 #### 登録の障壁を下げずに上げる * **賞品 フレーミング効果(表現方法が変われば捉え方も変わること)** を用いる。→将来的な格安プランの提案や返金保証、アンカリングを用いて**うまく誘導し、御社にとって「賞品」である**ことをアピールする。 * **希少性 「やる気のある10社」** に選ばれているのだと、希少価値をアピールする。 * **アンカリング** 既存の代替品との**相対価格**を提示する。既存のコストと比較して、コストダウンになる印象を与える。 * **度胸** 最終的には交渉に勝つ度胸が必要。MVPは最小限すぎてコストをかけられないと思っている人が多いが、**顧客の課題を解決するための最もシンプルな製品**であることを強調しアピールする。 #### ソリューションインタビューのAIDA * **認知(Attention)** UVPに顧客の認知を集める。→顧客の課題を突き付ける。 * **興味(Interest)** デモでUVPをどのように提供するかを示して興味を引く。 * **欲求(Desire)** 欲求は段階的に引き上げる。登録の障壁は下げない。欲求を喚起して強い約束を確実に手に入れなければならない。「希少性」と「賞品」で早い段階から価格の話に持ち込む。 * **行動(Action)** 口約束や前金を取り付ける。 ### 8.4 テスト可能な仮説 リーンキャンバスのうち、ソリューション、アーリーアダプター、収益の流れの3項目について検証する。 ### 8.5 ソリューションインタビューの実施 ソリューションインタビューは、従来の見込み客(アーリーアダプター)のほか、新規の見込み客も加える。 以下の流れで進める。 1. 歓迎(場の設定:2分) あいさつ→インタビューの理由→流れの説明→おことわり(売りつける意思が無いことを強調) 2. 顧客情報の収集(顧客セグメントの検証:2分) 顧客情報(家庭状況、現在利用中の既存の代替品等)を訪ねる。 3. ストーリーの伝達(課題の文脈設定:2分) これまでの開発ストーリーを要約してまとめる。 4. デモ(ソリューションの検証:15分) デモを行って、課題の解決方法を説明する。終わったら中断して質問がないかを聞く。これを繰り返す。 そのうえで、**デモで共感した所、必要ない機能、欲しい機能**を尋ねて検証する。 5. 価格の検証(収益の流れの検証:3分) 価格について話す。顧客セグメントに設定した「開始価格」を用いる。 **顧客には概算は聞かずに、こちらから価格モデルを伝え、相手の反応を検証する。** 6. まとめ(フックとお願い:2分) 次につながるように、他の見込み客の紹介を依頼する。 7. 結果の文章化(5分) 文章にしてまとめる。 ### 8.6 解決に値する課題はありましたか? #### 課題インタビューのポイント * 結果を**週次でレビューする。** 台本調整はレビュー時に。 * インタビュー結果をもとに、要望があった機能は追加を検討し、不要な機能は削除する。 * 前回の仮説を確認し、否定的な結果が得られた場合は仮説を立て直す。 * 提案した価格に抵抗がなければ、価格を高くしてみる。顧客の代替品の価格を参考に設定する。**誰がアーリーアダプターで、いくら支払ってくれるか。その価格で実現可能なビジネスを構築できるかを確かめる。** #### 顧客インタビュー終了条件 * アーリーアダプターが特定できた。 * 「絶対に必要」な課題が分かった。 * 現在の顧客の解決に必要な最低限の機能が実装できた。 * 顧客が支払ってくれる価格がわかった。 * (概算で)うまくいきそうなビジネス構築ができた。 ## 9章 バージョン1.0のリリース ### 9.1 製品開発は学習の邪魔 典型的な開発サイクルでは、顧客から学習できるのは要求を聞く時とリリース時で、開発やQA期間ではほとんど学習できない。 この要求→リリースまでのサイクルタイムを短くすれば、学習を加速できる。 ### 9.2 MVPの最小化 MVPのスコープを重要なものに絞って、開発を最小限にとどめて学習を加速させる。 MVPは製品の本質だけをモックアップにしなければならない。 #### MVPを濃縮する方法 1. **白紙から始める。** 最初は白紙で始まり、機能を追加するたびに正当性を検討する。 2. **最上位の課題から着手する。** 独自の価値提案(UVP)の役割は「説得力のある約束をすること」である。MVPの役割は「約束したものを届けること」である。 3. ***絶対に必要な機能の前提条件**でない限り、「必要ない」は削除し、「あればうれしい機能」はバックログに置いておく。 4. 2位、3位の課題のモックアップに対し、手順3を繰り返す。 5. **顧客の機能要求**を検討する。絶対に必要かどうかを検討する。 6. 初日から**課金**する。30日の無料試用期間を設けるのが一般的である。ネガティブオプション(押し売り)にならないように、クレカ情報の入力はさせないようにする。 7. 最適化ではなく**学習に集中する** ローンチ時点ではスケーリングの問題は発生しない可能性が高い。この段階では最適化よりも学習の加速にエネルギーを向ける必要がある。 ### 9.3 継続的デプロイを始める ソフトウェアを断続的にリリースする「継続的デプロイ」を実施すれば、サイクルタイム短縮につながる。 1度に1つずつ製造できるよう、製造工程を再配置して生産性を向上する、トヨタの「流れ化」がモデルである。(バッチサイズを1にしている) * 継続的デプロイは品質を落とすのでは? 正しく実践していれば、継続的デプロイは品質を落とすことにはならない。また、大規模な会社でも利用できる。(WealthFront社など) 洗練された継続的デプロイシステムを構築して高い品質水準を保証している大企業もある。(数百万ユーザー/日が利用) * 構築が大掛かりで面倒では? 確かに否定はできないが、継続的デプロイは学習や改善のフィードバックループなので、小さく始めることができる。 規模が小さい今こそ、継続的デプロイの基礎を構築して実施してみるべきである。 継続的デプロイのコードはユーザーに見せる必要は無い。 ### 9.4 アクティベーションの流れを定義する(ファンネル) アクティベーションの流れとは、顧客がサービスに登録してから最初の体験に満足するまでの道筋を表したもの。 顧客にできるだけ早くUVPを体験してもらうために行う。ローンチ後にうまくいかないことの多くはここで見つかる。 1. アクティベーション ↓ファンネル 2. 登録(開始) 3. 追加手順(ダウンロード・インストール・最初のギャラリーの作成) 4. 主要活動(UVPの体験) #### アクティベーションを高めるためのポイント * **登録の障壁は下げても、学習を犠牲にしてはならない!** 最適化よりも**学習**を! * **UVPを明確に示す!** 第一印象をよくするチャンスは1度だけしかない! * うまくいかなかった時は**ヘルプ**を用意して、その場で問題解決ができるようにする。**連絡先**も複数用意する。 ### 9.5 マーケティング用のサイトを構築する マーケティング用サイトは「製品を売る」ことを目的としており、顧客ライフサイクルを開始するのに不可欠である。 #### マーケティング用サイトの解剖(ファンネル) 1. 顧客獲得 ↓ファンネル 2. UVP(ランディングページ) 3. 他のページ(製品ツアーなど) 4. 価格(費用はどれだけかかるのか) 5. 「登録」をクリック(どうすれば始められるのか) #### その他の主なページ * 概要ページ 「あなたの会社から」製品を購入する理由を提供するものである。背後にあるストーリーを伝え、顧客と繋がるいい機会である。 * サービス利用規約ページとプライバシーポリシーページ Webサービスで必ず必要となる。分からない部分は法律の専門家の助言を受ける。 * 製品ツアーページ(動画やスクリーンショット) 技術的な詳細な仕様等を説明したページを別途用意する。顧客や顧客の動機の理解につながる。 #### ランディングページの分解 * **独自の価値提案(UVP) 最重要要素!** * **ビジュアル**の支援 UVPへの共感を視覚的に支援する。(画像・スクショ・動画等) * 明確な**誘導(リンク)** 全ページに明確な誘導(リンク)が必要である。目立ち、次に何が起こるのかをはっきりさせる。 * さらなる情報が必要な場合 問い合わせ電話番号やメールアドレスなどを記述する。 * **社会的説明** 信頼性を高めるための**推薦の声**や、「見たことのある」**ロゴ**を載せておく。 ###### tags: `読書`
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