# 何らかの短編7 こんにちはもひょ(G2)です。 この記事は、[みす老人会 Advent Calendar 2024](https://adventar.org/calendars/10110) の4日目の記事です。 この先は業が深いため、覚悟のある方のみ読み進めていってください。 興味のある方はぜひ以前の Advent Calendar で書かれた過去作もお読みください。 - [何らかの短編](https://hackmd.io/@QpcN7W4fSV-r6efweOCxpQ/BkY_oXIeE?type=view) - [何らかの短編2](https://hackmd.io/@QpcN7W4fSV-r6efweOCxpQ/SJgIKWNhH) - [何らかの短編3](https://hackmd.io/@QpcN7W4fSV-r6efweOCxpQ/rkc78qlaD) - [何らかの短編4](https://hackmd.io/@QpcN7W4fSV-r6efweOCxpQ/rkaqueStt) - [何らかの短編5](https://hackmd.io/@QpcN7W4fSV-r6efweOCxpQ/r1m89lUvs) - [何らかの短編6](https://hackmd.io/@g2r/BkWpxaiEa) zuzuさんによる次の記事も読むと深みが増すかもしれません。 - [51代受肉勢の独断と偏見による関係性](https://hackmd.io/s/S1FUIqfxN) 注釈:ここから先は別位相の話であり、実在する人物、団体とはそんなに関係ありません。 # おまたせ、またいつか! 大学の教室はいつものように賑やかだ。特に、授業が終わってお昼の長い休みに入るこの時間は、最も騒がしい時間と言っても過言ではないだろう。 さっさとこんな喧騒からはおさらばして、どこかで静かにお昼ごはんを食べようと席を立つ。その時、ふと目に入ったのは、少し離れた場所で困った顔をしているクラスメイトだった。彼女はどうやらしつこく絡んでくる男に困っているようだった。 まあ男の気持ちはわかる。 艷やかな青い髪は柔らかく流れ、ピンクのシュシュは彼女のかわいらしい雰囲気によく似合っている。髪よりも深い蒼の目はくりくりとしており、彼女の活発さを表しているようだ。今でこそ沈んだ雰囲気になっているものの、笑顔を見せたらかわいいという言葉が素直に似合う、そんな目鼻立ちをしている。 そろそろ期末で、この授業が終われば会う機会も少なくなってしまうからだろうか。あるいは、大学一年生の夏という、ある種の魔法が彼を突き動かしたのだろうか。 男は焦った様子でお昼ごはんを一緒に食べようと誘っているようだった。 俺はそんな彼らの方向に歩いて行く。 なんとなく、なんとなく気が向いただけ。ほんの善心が囁いたのだ。 息を大きく吸い込み、いつになく大きな声を出す。 「おまたせ! ここにいたんだね!」 つとめて明るい声で、緊張でドキドキする胸の鼓動を抑えながら。 「ごめんね、待たせちゃって。お昼行こうか!」 ぽかんとする彼女に向かってまくしたてる。心拍数が上がり、頭の奥が熱くなる。 「ほら、早くカバンに教科書詰めて。約束のお店すぐ混んじゃうんだから。早く行くよ!」 ここまで言って、ようやく私の意図に気づいたのか、彼女も急いで荷物を詰めて席を立った。 男に向かってごめんなさいと一言告げる彼女を見て、そんな男に謝らなくて良いよと少しムカムカした気持ちを抱く。そんなんだから目を付けられるんだぞ、と。 親しさを演出するために彼女の……なかさんの肩を抱いて、そのまま教室を去った。 あとから聞いてみれば、いくら友達とはいえ肩を抱くのは変だろうとツッコまれてしまったが、正直その時の俺は緊張のあまり自分でも何をしているかわかっていなかったと思う。肩を抱いていたことすらあとで教えてもらったことだった。 それからの顛末として、男はなかさんにしつこく絡むことはなくなった。魔法が解けたか、別の魔法にかかったかは定かではない。そのまま再度の俺の出番はないまま期末試験を終え、その授業は平和に終わる。 俺は断ったが、彼女は学期の間は律儀にお礼がしたいとお昼を何回か奢ってくれて、すごく礼儀正しい人だなと思った。けれども、俺と彼女はそれっきり。 再会したのは、夏を何度か越えたあとのこと。 ++++ ++++ 「おまたせ! ここにいたんだね!」 あの日と同じように。けれども今度は嘘ではない声掛け。 「ごめんね、待たせちゃって!」 なかさんはいつもと違う俺の様子にぽかんとしている。きっと覚えてないだろうなあなんて、ちょっとしたいたずらに満足感を感じる。 そのままニヤニヤしながらなかさんを眺めていると、なかさんはくすりと笑って言った。 「今日は肩を抱いてくれないんだ。じゃあ私が抱くね」 俺の肩に馴れ馴れしく置かれた腕。ふわりと香る彼女の甘い匂い。 俺の口からため息がこぼれる。 「あのさあ」 「うん?」 「なかさんは、ときどきずるい」 「ふふ、かわいい」 それは俺のセリフだぞ、とは言えなかった。 == ここから先は会員登録が必要です。 == == 会員になると月額980円で色々な位相のなかクラが読み放題!? 受肉群像劇も続々追加。会員登録は… ==
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