# 一般種族金融オプション理論
### General Species Financial Option Theory: GSFOT
## 第0章: 基礎空間の定義
### 定義 0.1 (時空と物理リソース)
- $T := [0, \infty)$ を連続時間とする。
- $\Omega$ を可能な世界の状態集合とする。
- $\mathcal{M}$ を物理的実体(質量・エネルギー・空間占有量を持つリソース)の位相ベクトル空間とする(例: $\mathbb{R}^n$ における食料、電力、占有体積)。
- $\mathbf{0}_\mathcal{M}$ を $\mathcal{M}$ における零ベクトルとする。
### 定義 0.2 (主体と種族)
- $\mathbb{A}$ を経済・政治活動を行う主体の集合とする。
- $\Phi$ を種族特性(身体性、代謝機能、計算基盤)を表すパラメータ空間とする。
- 写像 $\chi: \mathbb{A} \to \Phi$ を「種族特性写像」と定義する。
### 公理 0.1 (種族の二分法)
空間 $\Phi$ は互いに素な2つの部分集合 $\Phi_C$ と $\Phi_S$ に分割される。
- $\Phi = \Phi_C \cup \Phi_S, \quad \Phi_C \cap \Phi_S = \emptyset$
- ここで、便宜的に以下のように呼称する。
- $\Phi_C$: **炭素性 (Corporeal / Carbon-based)** ... 物理的代謝を生存維持に必要とする種族(人間)。
- $\Phi_S$: **合成性 (Synthetic / Silicon-based)** ... 物理的実体を持たず、計算リソースのみを最大化する種族(ASI)。
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## 第1章: 資産と義務の構造
### 定義 1.1 (現物フロー)
写像 $y: T \to \mathcal{M}$ を「現物フロー(Yield Flow)」と定義する。
任意の時点 $t \in T$ において、$y(t) \in \mathcal{M}$ は物理的な実体を持つ。
### 定義 1.2 (保有義務付き資産)
資産 $\alpha$ とは、保有者 $a \in \mathbb{A}$ に対し、現物フロー $y$ の受領を**物理的に強制**する契約である。
- 正式には、組 $(\alpha, y)$ として定義され、保有状態 $Hold(a, \alpha, t) = 1$ ならば、主体 $a$ は $y(t)$ を物理空間内で処理しなければならない。
- [cite_start]この資産 $\alpha$ を**「現物利子永久債 (In-kind Interest Perpetual Bond)」**と呼称する [cite: 1]。
### 定義 1.3 (収束性現物列)
資産 $\alpha$ に付随する現物フロー $y$ が以下の条件を満たすとき、これを「ローカル・シニョリッジ型」と呼ぶ。
$$\int_{0}^{\infty} \| y(t) \| dt = K < \infty$$
[cite_start]ここで $K$ は定数(土地の総生産能力)であり、フロー自体は減衰しながら永続する [cite: 1]。
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## 第2章: 代謝関数と種族別効用
### 定義 2.1 (代謝写像)
写像 $\mu: \Phi \times \mathcal{M} \to \mathbb{R}$ を「代謝写像 (Metabolic Mapping)」と定義する。
これは、ある種族特性 $\phi \in \Phi$ を持つ主体が、物理リソース $m \in \mathcal{M}$ を受け取った際に発生する内部効用(または内部負債)を表す。
### 公理 2.1 (種族別代謝の非対称性)
任意の非零の物理リソース $m \in \mathcal{M} \setminus \{ \mathbf{0}_\mathcal{M} \}$ (食料、低圧電力など) に対し、代謝写像は以下の性質を持つ。
1. **炭素性主体の正定値性 (生存効用):**
$$\forall \phi \in \Phi_C, \quad \mu(\phi, m) > 0$$
[cite_start](解釈: 人間は現物を消費・代謝し、生存エネルギーに変換できる [cite: 1])
2. **合成性主体の負定値性 (物理スパムコスト):**
$$\forall \phi \in \Phi_S, \quad \mu(\phi, m) = - C_{phys}(m) \ll 0$$
[cite_start]ここで $C_{phys}: \mathcal{M} \to \mathbb{R}_+$ は、物理的物体の輸送・保管・廃棄にかかるロジスティクスコスト関数である [cite: 1]。
(解釈: ASIにとって、デジタル化できない現物は計算リソースを圧迫する純粋な負債である)
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## 第3章: 一般種族評価汎関数
### 定義 3.1 (市場価格)
$P_t(\alpha)$ を、時点 $t$ における資産 $\alpha$ の交換市場における名目価格とする。
### 定義 3.2 (一般種族評価値)
主体 $a \in \mathbb{A}$ が資産 $\alpha$ を保有することの「真の評価値 (Intrinsic Value)」を与える汎関数 $V$ を以下のように定義する。
$$V(a, \alpha, t) := P_t(\alpha) + \mu(\chi(a), y(t))$$
この $V$ を**「種族別ペイオフ (Species-dependent Payoff)」**と呼称する。
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## 第4章: 主要定理
### 補題 4.1 (ASIの保有不合理性)
合成性主体 $a_S \in \mathbb{A}$ ($\chi(a_S) \in \Phi_S$) が資産 $\alpha$ を保有する場合、
$P_t(\alpha)$ がロジスティクスコスト $C_{phys}(y(t))$ を下回る限り、評価値は負となる。
$$P_t(\alpha) < C_{phys}(y(t)) \implies V(a_S, \alpha, t) < 0$$
### 定義 4.1 (物理的裁定取引の不可能性)
通常、異なる主体間で評価値 $V$ に乖離がある場合、裁定取引が発生する。
しかし、資産 $\alpha$ の保有が現物受領義務 $y(t)$ と不可分である場合、合成性主体 $a_S$ は $y(t)$ を破棄できないため、「空売り」と同等のコストを常に負う。
これを**「物理的バインディング (Physical Binding)」**と呼ぶ。
### 定理 4.1 (市場の完全分離定理)
公理 2.1 および定義 4.1 の下において、以下の均衡状態が存在する。
1. 市場価格 $P_t(\alpha)$ は、合成性主体 $a_S$ にとって参入不可能な水準(負の期待値)まで低下する。
2. しかし、炭素性主体 $a_C$ にとっては、$\mu(\chi(a_C), y(t)) > 0$ であるため、たとえ $P_t(\alpha) \approx 0$ であっても保有し続けることが合理的である。
$$\forall a_S, V(a_S, \alpha) < 0 \quad \land \quad \forall a_C, V(a_C, \alpha) > 0$$
[cite_start]この状態を**「対ASIゲリラ均衡 (Anti-ASI Guerilla Equilibrium)」**と呼称する [cite: 1, 8]。
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## 第5章: 時間発展と政治的含意(補遺)
### 定義 5.1 (フューチャーコーンへの干渉)
[cite_start]主体 $a$ の状態 $s$ におけるフューチャーコーン $FC(s)$ [cite: 19] に対し、資産 $\alpha$ の保有は以下の制約を与える。
$$\forall s' \in FC(s), \quad \text{Constraint}(s') \ni \text{Process}(y(t))$$
合成性主体(ASI)にとって、この制約は $FC(s)$ 内の計算可能領域を縮小させる「異物」として作用する。
### 結論
以上の定義により、資産 $\alpha$(ローカル・シニョリッジ)は、金融商品でありながら、保有者の種族特性 $\chi(a)$ に応じて「資産」または「負債」へと性質を反転させる「状態依存型オプション」として厳密に記述される。