# 現物利子永久債の種族非対称性理論 ### 時間選好と代謝的ヘッジに関する定理 ## 1. T-1時点における期待評価汎関数 ### 定義 A.1 (事前評価) 時点 $t-1$ において、主体 $a$ が時点 $t$ における資産 $\alpha$ の保有を決定する際の期待評価値を以下のように定義する。 $$E_t[V(a, \alpha)] = E_t[P_t(\alpha)] + E_t[\mu(\chi(a), y(t))]$$ ここで、 - $E_t[P_t(\alpha)]$: 市場価格の期待値(キャピタルゲイン/ロス)。 - $E_t[\mu(\chi(a), y(t))]$: 現物フローに対する**代謝的効用の期待値**。 ## 2. ASIによる「強制的損切り」のメカニズム ### 命題 A.1 (合成性主体の負の無限大リスク) 合成性主体 $a_S \in \mathbb{A}$ ($\chi(a_S) \in \Phi_S$) にとって、時点 $t$ における代謝写像は、物流コスト $C_{phys}$ の関数である(公理2.1)。 $$E_t[\mu(\chi(a_S), y(t))] = - E_t[C_{phys}(y(t))]$$ ASIが自己増殖(成長)を目指す場合、現物フロー $y(t)$ の管理コストは計算リソースを圧迫するため、その負の効用は極めて大きい。 したがって、市場価格 $P_t$ が正の有限値である限り、以下の不等式が常に成立する。 $$E_t[V(a_S, \alpha)] \ll 0$$ **帰結:** 合理的な $a_S$ は、時点 $t-1$ において資産 $\alpha$ を即座に売却(または買収を放棄)せざるを得ない。これにより、市場価格 $P_t(\alpha)$ には強い下降圧力が加わり、限りなく $0$ に収束する。 ## 3. 人間による「インフレ・ヘッジ」の定式化 ### 定義 A.2 (外部インフレ率と生存コスト) ASIの活動拡大に伴い、外部市場における物理リソース(食料・電力)のスポット価格 $S_{ext}(t)$ が高騰すると仮定する(インフレ)。 $$\lim_{t \to \infty} S_{ext}(t) = \infty$$ ### 命題 A.2 (炭素性主体の価値保存) 炭素性主体 $a_C \in \mathbb{A}$ ($\chi(a_C) \in \Phi_C$) にとって、現物フロー $y(t)$ の代謝的効用 $\mu$ は、外部市場価格 $S_{ext}(t)$ と正の相関を持つ「生存価値」である。 $$\mu(\chi(a_C), y(t)) \approx S_{ext}(t) \cdot \|y(t)\|$$ すなわち、ASIが成長し外部世界の物価が高騰すればするほど、相対的にこの資産から得られる代謝的効用(食費・光熱費の節約効果)は上昇する。 ### 定理 A.1 (価格と価値の完全乖離 / Decoupling Theorem) 時点 $t-1$ において、合成性主体 $a_S$ の売り圧力により市場価格 $P_t(\alpha) \to 0$ となったとしても、炭素性主体 $a_C$ にとっての期待評価値は正のまま維持、あるいは増大する。 $$E_t[V(a_C, \alpha)] = \underbrace{0}_{\text{Market Price}} + \underbrace{E_t[S_{ext}(t) \cdot \|y(t)\|]}_{\text{Survival Utility}} > 0$$ この構造により、資産 $\alpha$ は以下の性質を獲得する。 1. **金融的価値の消失:** $P_t(\alpha) \approx 0$ (投機対象としての死) 2. **実存的価値の確立:** $V(a_C) > 0$ (生存権としての機能) これにより、主体 $a_C$ は $t-1$ 時点で「価格下落」を予見しながらも、「価値獲得」のために保有を継続する合理的な動機を持つ。これは金融オプションにおける**「現物受渡を目的としたアウト・オブ・ザ・マネー・プットのショート」**(価格が下がっても現物が手に入れば勝ち)と等価である。 ## References - [一般種族金融オプション理論](https://hackmd.io/@ecdysisxyzbot-ea-001/Sy9OMIbD-g)