# インタビューへの回答案 ## 1-1.仕事内容 私は、ITコンサルティング会社でデータ解析技術の研究開発職と、先端技術のコンサルタンティングを行っています。 流行りの言葉で言えば、「AIの研究者」とか「データサイエンティスト」といったカテゴリになると思います。 立場としてはマネージャーの一歩下くらいです。 ### コンサルティング 私は生命科学分野を大学院で博士課程まで研究しており、その関係もあって製薬企業、大学病院、医療機器メーカーなどの顧客に対するデータ解析技術のコンサルティングを行っています。 これらの業界では近年大量かつ多様なデータが取得可能になっていますが、それを十分に活用しきれていない課題があります。 幾つか例を挙げてみます。 - レセプト (診療報酬) のデータは国や企業が整備していますが、それは単なる医療会計に留まらず、薬の副作用の分析とか、薬の市販後調査とか、副次的な活用方法があり、特に制約企業は大きな関心があります - 大学病院でも今年からがんのゲノム検査が保険摘要されるようになり、今後数年をかけて何万人というがん患者のゲノム情報が蓄積されることになります。しかし、解析基盤をしっかり整備しなければ活用不能なデータが大量に蓄積していくだけになり、データ解析の仕組みを作り上げることが急務になっています - ある大学では過去に流行したインフルエンザのゲノム情報を整備しており、製薬企業はそれらのデータを使って将来の流行を予測することで薬の開発を効率化したいと考えています 他にも色々あるのですが、このように多種多様なデータとそれに伴う未解決の問題があります。 私の仕事のミッションは、こうした種々の問題に対し、私の生命科学分野の知見と、データ解析の技術力を使って実際に問題の解決の道筋を見つけることです。 具体的に言えば、レセプトデータに対して副作用の分析ができるプログラムを作る、ゲノムの自動分析を実現する計画書を作る(システムの概略図、設計書、費用など)、インフルエンザのデータの解析を自分で行って結果をレポートする、ということです。 仕事は1件あたりだいたい3~6ヶ月程度のことが多く、複数並行でやりながら1年で5~10件程度受けています。 ### 研究開発 大きく分けて3パターンあるので、順に説明します。 1. 主にコンサルティングの際に色々な大学・企業の方と話して、技術的に解決できそうな問題について、そのための開発をすることになります。 専門的な内容になるので難しいですが、例えば現状人手でものすごい頑張ってやっている特徴量エンジニアリングを、半自動化する仕組みを作るとか、そういうことです。 もし良いものが作れれば、様々な企業に対して、その仕組みを売っていって、研究費を稼ぎつつ、自分達の技術をより深めることができて一石二鳥です。 2. 自分達の仕事の高度化も重要で、例えば今まで自分達の作っていた予測モデルをもっと高性能化するにはどういう風にAIの学習プロセスを改善すればいいかとか、そういったこともしています。 3. 他には、他の企業と共同で新しいものを開発するという場合もあります。 この場合はもっとその企業に特化した課題について、イチから作り上げていくイメージです。直近では、以下の仕事で技術提供をしました。 > 富士通、信用スコアの機能提供 金融機関にクラウドで > > https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48980270V20C19A8TJC000/ ## 1-2. 好きな仕事内容 上記で説明したそれぞれに良い点はありますが、最も大きいのは、「色々なことに俯瞰的に取り組める」ことだと思います。 たとえば製薬企業の中にもデータサイエンティストと呼ばれる人はいるわけですが、そういった人は社内の何かしらの大きなプロジェクトを長期間やっている場合が多く、1年に10件のプロジェクトをこなすというのは普通ないと思います。 沢山の種類の仕事をこなすことで見えてくるものもあり、刺激も多いので私はこういった点は良いと思っています。 また、仕事で他の企業や大学の方と会う機会が多い点も好きな点です。 会社で仕事をしているとどうしても狭い人間関係に閉じがちですが (だいたい日常的に会話するのは10人程度でしょうか)、そうなると自分の発想も固定化しやすく、刺激を受けづらくなります。 一方で、他の企業の方は私とは異なる立場で、異なる背景・経験を持っているため、打ち合わせの場で学びを得ることも多いです。 また、私や会社のどういった点が他から評価されているか、という客観的な視点を持つ上でも他人の存在は重要で、色々な相手に出会えるのは非常に良いことだと思います。 時期によりますが、週に2~5回くらいは外部との打ち合わせをしており、こうした時間が非常に貴重だと感じています。 余談ですが、お互い忙しくて席が隣なのに同僚と一週間ぶりに話すこともあったりして、なんだかんだ社内からも刺激を受けることはあります。 ## 2-1. 仕事に就くのに必要な資格 資格は特に必要ないです。 ただし、論理的思考力や数理的な知識は高いレベルで必要になります。 学力的には大学で言えば早慶レベルくらいは必須なラインです(※)。 多くの社員は理系出身で、大学院の修士課程を卒業しています。これも必須ではないですが、そういった大学の理系の学生は8割ほど修士課程まで進学するので、自然とそうなるというのが正しいかもしれません。 これは同じ職種なら他の会社でも似たようなものだと思います。専門性の高い仕事ではあると思います。 (※卒業した大学が特定の大学でなければ採用しないということではなく、個人単位で見たときに早慶の平均レベル以上の能力を持っているかどうかが基準ということです) ## 2-2. 資格を得るために努力したこと 私は元々は大学での研究者を目指しており、生命科学分野で博士課程を卒業しました。 その際の研究経験や学術的知識が現職での下地になっていると思います。 例えば、製薬企業、大学、弊社の三者共同で新しいデータ解析技術の研究を行うようなプロジェクトでは、 1. 企業・大学の研究者と専門的な内容について深く話すことができる 2. 今進めているプロジェクトが製薬企業 (プロジェクトの出資者) のビジネスにとってどういう付加価値があるか (例: 将来儲かるのに貢献するか) を明確にできる という2種類の異なる能力が必要になります。 いくらデータ解析技術が高くても、この2つもこなせなければ、リーダーとして仕事をすることはできないです。 そのためには研究・学問に深くコミットした経験と、コンサルティング能力の両面が必要になります。 データ解析やコンサルティングに関しては入社してからでも鍛えられますが、研究・学問に関しては入社後に大きく伸ばすことは難しいです。 そういう意味では、図らずも大学で研究者を目指していた頃の経験・知識が、私と他の人との最大の差別化要素になっていますね。 ## 3-1. 現職の良い点 3つ挙げるなら、 - 個人の裁量が大きい点 - 研究開発に携われる点 - 優秀な上司・同僚 になると思います。 ### 裁量 目標を達成している限りは (3-2で説明します)、細かいことはあまり言われません。 勤務時間や休暇の取得もかなり自由ですし、家で仕事をすることもできます。自分の仕事の内容も自分で決められます。 会社での仕事と言うと、目上の人がいて、その人の指示を事細かに聞いて自由の余地がない……というイメージがあるかもしれませんが、この仕事に関してはそういうことはないです。 コンサルティング案件なら、上司には自分のプロジェクトの概要を伝えて、契約の内容(顧客、契約形態、受注金額、契約期間、参加メンバー)を詰めて、実際に仕事を進めている間はほとんど自分と顧客の間で進めます。 つまり、打ち合わせの場は自分が代表で出て、顧客に説明しながら、仕事していくことになります。 これは大変な面もありますが、自分で納得できる仕事ができる環境があるということで、私は好ましいことだと思います。 ### 研究開発 世の中で進んでいる技術を自分で導入したり、それを使って新しいことをしたり、といったことを自分の興味に基づいて取り組んでいけるのは非常に良い点だと思います。 大学の道を諦めて就職する際には今後はあまり自由はないものと思っていましたが、実際に始めてみるとそんなことはあまりなく、以前と同じかそれ以上に自由に色々なことに取り組めています。 また、色々な案件があるので、意外な発見もあって面白いというところもあります。 仕事内容のところで紹介した件は、元々私の専門の生命科学とは全く違うので最初はあまり乗り気ではありませんでしたが、やってみると個人の情報をどういったICT技術を使って扱うべきか、という点では医療分野のそれと近い点が多く、新鮮かつ参考になる点が多くありました。 ### 優秀な上司・同僚 自分がいくら優秀でも一人で全ての仕事をこなすことはできません。 自分の経験が足りない内は知らないこと・できないことは常にありますし、逆に経験を積むと忙しくなり、どうしても他人に任せなければいけない部分がでてきます。 そういう時は他人の力を借りるわけで、仲間の優秀さは仕事の快適さにかなり影響するという実感があります。 私の最初の上司はあまり話がわかるタイプではなく、そこで無駄な時間をかなり費やしましたが、今の上司は論理的に正しいことを言えば納得してくれるので、無駄なことはあまり必要なくなりました。 自分の研究の価値も、究極的には誰もわからないのですが、最終的には上司との信頼関係でゴーサインが出るところが大きいです。この辺りもお互いに普段から上手くいってないと難しい気がします。 また、同僚も同じで、私の得意な部分を頼ってくれたり、逆に私の苦手な部分を助けてもらったり、そういったことが良い仕事をする上では大事です。 例えば、ある研究機関から依頼された技術調査のプロジェクトでは、完全に私の専門外の領域かつ物凄い忙しい時期で受けるか悩んだのですが、報告書の全体のストーリーは私が作って、数学科出身の若手2人に論文の細かい部分を読み込んでもらって細かい部分を埋めてもらう、という分担で上手く乗り切れたりしました。 ## 3-2. 現職の苦労した点 - 予算 (目標) - 勤務時間 - 後進の教育 ### 予算 (目標) 私のいる部門は若い組織なのもあってあまり分業されておらず、研究費は自分達で賄う必要があります。 会社によっては営利部門と研究部門がキッチリ分かれていて、研究だけやっていれば良いという場合もあります。 私の場合は兼務なのでどちらもしなければいけません。なので、顧客からお金をもらってやる仕事と、自分の研究の配分を考えていかなければいけません。 目安としては、年収の3倍くらいの売上 (顧客に支払ってもらうお金) が必要です。その1/3が私の給料で、残りは事務方の給料とか諸々の経費とか会社の利益とかになります。どの会社でもそうですが。 なお、もし予算が極端に未達の場合、自分の研究をする時間が失われることになります。やりたくない仕事でもやる必要がでてきます。 ### 勤務時間 最近の勤務時間はそれほど忙しくなく、週5日で10時~20時くらいです。 ただ、以前には毎日9時~23時くらいの勤務が常態化していた時期もありました。この辺りはその時に手掛けているプロジェクトの内容に強く依存します。 当時、生命科学系の分野はこの部署では私がほぼ第一号で他に頼る相手もいなかったことと、従来から他の人達やっていた仕事のヘルプ (と言いつつ実際はメインだったかも……) の両方をこなしていたのでかなり苦労しました。 さすがに毎日14時間働くと体はかなり厳しいです。あと法定の残業時間の制約に引っかかりそうになり、そっちの苦労もあります。 ### 後進の教育 比較的若い人が多い (職場の7割は20~30代) のですが、その分教育には苦労する面があります。 データ解析の技術などはある程度教えられますが、結局のところ本人がやる気をどこまで出すかによりますし、前述の通り仕事もそれなりに大変&時間がかかるので、勉強を強制することもできないです。 また、ビジネス的な素養はそもそもどう訓練できるのかもよくわからないので、現状はできる人のセンスに任せてしまっている面もあります。 この辺りは専門職には共通の悩みかと思います。つまり、個人差が大きくなりやすい業界で、それをどう解消するかということですね。 行き過ぎると、出来る人への仕事の過度な集中と、それによって本人の不満が溜まってモチベーションが低下したり、離職に繋がったりします。給料はみんなだいたい同じですからね。 ## 4. 余談 せっかく私に頼って頂いたので、自分の経験上重要なことを幾つか蛇足ながら記しておきます。 1.合う合わないの問題 私は比較的今の職場が合う方ですが、人によっては全く合わないと思います。 去年入社の子が最近やめましたし、派遣で来た方が3日で来なくなった例もあります。 私が書いた話も、人によっては「ブラックだ」という印象を持つ場合もあると思いますし、それが間違ってると言うこともできないかもしれません。 合わないのが行き着く所まで行けば、うつ病にもなり得ます。これは自分の職場に限らないです。 逆に、合うところで働いていれば、そこまで行くことはあまりないと思います。 自分に合うところをどう見つけるかは難しいですが、頭の片隅にでも留めて頂ければ良いかと思います。 ちなみに、若い人が少ない場所は、個人が合う合わない以前に根本的に問題がある可能性が高いです。 2.まじめさの価値 これは職場による部分がかなり大きいんですが、私の職場ではいわゆる社会一般でいう「まじめ」かどうかはあまり関係ないです。 不真面目うんぬんよりも、尖った部分がなくて物足りないことの方が深刻な問題だからです。 つまり、真面目で普通に一通りできる人でも、「別に君に頼まなくていい」と他の人が思ったら、結局だめなわけです。 学校ではそういう人は手がかからないので先生からしたら有り難いのですが、職場では場合によっては単に「頼りないやつ」で終わる可能性があります。 なお、周りと仲が悪い人はそもそも仕事に参加させられないのでだめです。仲良しでなくてもいいですが。 時にシビアなことを言う必要は当然ありますが、その時に感じが悪くないようにやわらかく言える人が重宝されます。その努力を怠る人は信用されません。 この辺りは専門職だと割とよくあることだと思います。 世間でいう「まじめ」とは違う概念ですが、こういうことが大事だと私は思っています。 3.やりたいこと 仕事をする上で「やりたいこと」というのはしつこく言われます。 仕事なんかしたくないよ、が答えかもしれませんし、それでも良いんですが、仮にそれを正としてもやはり「何がやりたいのか」を問われます。 それなりに優秀で、ちゃんと仕事をしていると、そういう人同士の差を分けるのは長期的な目標・ビジョンがあるかどうかだからです。 私の場合は、「科学技術の発展による人間・社会の変化」をテーマにしています。全ての仕事のやりたい or やりたくないの度合いはこれで測られます。 これに影響する度合いの高い技術ほど深く研究して、そうでないものはあんまり重視しません。 なお、これはここ1~2年くらいの話なので、2年後には全く違うテーマをもってそれが全てだと言うかもしれません。 ただ、こうした何らかの軸を自分の中に持っていることがその人の世界観になって、他人と違う何かを実行する原動力になるのだと、私に限らず、多くの人は考えています(そこまで考えが至っていない人も勿論多いですが)。 そうでないと、ただ目の前のことはきっちりこなすけど、他人を唸らせることはない、そんな仕事ばかりになってしまいます。 それだと専門家としては物足りないです。 別の言い方をすれば、自分にどのようなストーリーを付与するかということでもあります。 ある本では、医療機器メーカーの面接試験で、医療機器を研究していた大学院生は元々自分の研究や技術を紹介するつもりでしたが、一転して「動脈硬化と戦う戦士」というイメージを中心としたプレゼンに変更し、採用されたという話があります。 やりたいこと、というのは要するにそういうことです。具体的な事象から一瞬離れて、イメージに昇華し、そこからまた具体に戻っていく……そういう考え方ができると望ましいですね。 私も出来ていないことも多いので、まだまだ修練が必要ですが…… 4.仕事との付き合い方 人のスタンスによりますが、仕事がうまく行かないとあまりハッピーになれない人がわりと多いです。 自己肯定感にも関わってくる部分ではあると思います。 毎日8時間なり10時間なり、つまらない時間を過ごしているのは嬉しくないですよね。 一方で、仕事にハマり過ぎるとそれはそれで良くない面もあります。私も一時期はそうでした。 そうなると仕事以外の社会との接点を失って、より仕事にのめり込むようになります。仕事依存症です。 意外にも、その瞬間は本人的には満足しているのですが、ある時にふと自分を振り返ると、人生に何かを残してきたのか……という疑問が生まれます。 私はあることがきっかけで、それに気付きました。数年で気付いたのでまだマシですが、場合によっては60歳くらいになってそれに気付くこともあると思いますし、実際そうなった可能性はあったと思います。 つまり、仕事との付き合い方は一筋縄ではなく、こうしておけば正解、というものはありません。 幾つか私が気付いたヒントはありますので、それを共有して終わりにしたいと思います。 - 得意なことをやると楽しい - 最初は興味のないことでも、やってみると面白いことは割とある - やってみたいと思ったことでも、周りとの人間関係がうまくいかないとすぐに行き詰まる - 自分が本当にしたいことを考え続ける
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