## 合同ゼータ函数と$q$解析的な函数の関連について [三重積](https://mathtod.online/@triprod1829) 2017年7月9日公開 2017年7月15日:$G_2(t)$の定義を分子分母逆にしたものに変更。 ### はじめに 合同ゼータ関数と$q$解析的な関数の関連についての個人的な考察について書きます。 以下の考察の中ではところどころ厳密でない部分があります。また、私の勉強不足により(特に数論幾何的な部分で)おかしなことを言っている点もあるかもしれませんが、アイデアについてのコメントや誤りについてのご指摘をいただけると幸いです。 ### 射影空間の合同ゼータ関数の函数等式とJacobiの三重積公式について ここでは、射影空間の合同ゼータ関数の函数等式と、Jacobiの三重積公式の関連について述べます。 まず合同ゼータ関数の定義について。$X$を有限体$\mathbb{F}_{q}$上の非特異射影代数多様体とするとき、$X$の合同ゼータ関数${\mathit {Z}}(X,t)$は \begin{align*} {\mathit {Z}}(X,t)=\exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}N_{k}{\frac {t^{k}}{k}}\right) \end{align*} と定義されます。ここで$N_{k}$は$X$の$\mathbb{F}_{q^{k}}$有理点の個数です。 この定義から、射影空間の合同ゼータ関数は次のとおりに計算されます: 有限体$\mathbb{F}_{q^{k}}$上の$n-1$次元射影空間$\mathbb{P}^{n-1}$の有理点の個数は、 \begin{align*} \frac{(q^{k})^{n}-1}{(q^{k})-1}=1+(q^{k})+(q^{k})^2+\cdots+(q^{k})^{n-1} \end{align*} です。このことから、 \begin{align*} {\mathit {Z}}(\mathbb{P}^{n-1},t)&=\exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}(1+(q^{k})+(q^{k})^2+\cdots+(q^{k})^{n-1}){\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &=\exp \left(\sum _{i=0}^{n-1} \sum _{k=1}^{\infty } {\frac {(q^{i}t)^{k}}{k}}\right) \\ &=\exp \left(-\sum _{i=0}^{n-1} \log(1-q^{i}t)\right) \\ &=\prod_{i=0}^{n-1} \frac{1}{(1-q^{i}t)} \\ \end{align*} となります。 ここでは、この函数とJacobiの三重積の関係について触れます。そこで次にJacobiの三重積公式について述べます: #### 定理(Jacobiの三重積公式) \begin{align*} (q;q)_{\infty}(t;q)_{\infty}(q/t;q)_{\infty}=\sum_{k=-\infty}^{\infty}(-t)^{k}q^{\frac{1}{2}k(k-1)}. \end{align*} が成り立つ。ここで、$(t;q)_{\infty}$は$q$ポッホハマー記号で、$(t;q)_{\infty}=\prod_{k=0}^{\infty}(1-tq^k)$です。 以下では、Jacobiの三重積公式を、射影空間の合同ゼータや、その関数等式と絡めて証明していきます。 #### Jacobiの三重積公式の証明 まず、射影空間$\mathbb{P}^{n-1}$の合同ゼータについて、関数等式 \begin{align*} \prod_{i=0}^{n-1} \frac{1}{(1-q^{i}/(q^{n-1}t))} = (-t)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}} \prod_{i=0}^{n-1} \frac{1}{(1-q^{i}t)} \end{align*} が成り立ちます。これは簡単な計算で確かめられます(Weil予想により一般にも函数等式が成り立つ)。さらに、この等式は$q$が有限体の位数でなくとも成立するので、以後$q$を単なる形式的なパラメータとして考えることにします。 ここで、この左辺は$q$ポッホハマー記号を用いて$\frac{(q/t,q)_{\infty}}{(q/(q^{n}t),q)_{\infty}}$とかけ、同様に右辺は$\frac{(q^{n}t,q)_{\infty}}{(t,q)_{\infty}}$とかけます。そこで函数等式の両辺を$q$ポッホハマー記号で書き換えて、分母を払うと、函数等式は \begin{align*} (t,q)_{\infty}(q/t,q)_{\infty}= (-t)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}} (q^{n}t,q)_{\infty} (q/(q^{n}t),q)_{\infty} \end{align*} と書き直すことができます。 ここで、$(t,q)_{\infty}^{-1}$は射影空間の合同ゼータ関数の有理式において、形式的に次元を無限大に飛ばしたものに等しく、この等式は「無限次元射影空間の合同ゼータ関数」の函数等式のようなもの、と見なすことができるかもしれません。 さらに、この左辺はJacobiの三重積の$3$つの無限積のうちの$2$つであり、右辺は左辺の$t$を$q^n$だけシフトさせたものに、$(-t)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}}$の項をかけたものになっています。 また、この等式は$n$が$0$以下でも成り立つため、以後$n$は整数として考えることにします。 そこで、左辺を展開した形式的ベキ級数を$t$の指数ごとにまとめた式を$\sum_{i=-\infty}^{\infty} F_i(q)t^{i}$とおくと、この式は \begin{align*} \sum_{i=-\infty}^{\infty} F_i(q)t^{i}=(-t)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}}\sum_{i=-\infty}^{\infty} F_i(q)(q^{n} t)^{i} \\ = \sum_{i=-\infty}^{\infty} (-1)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}+ni}F_i(q) t^{n+i} \end{align*} が任意の整数$n$で成り立つ、ということを言っていることになります。これが恒等式として成り立っているため、$F_i(q)$たちの間には、 \begin{align*} F_{i+n} = (-1)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}+ni} F_i(q) \end{align*} という関係があることになります。そこで、この式で$i$を$i=0$と固定し、$n$を変数とみれば、任意の$n$で \begin{align*} F_{n}(q) = (-1)^{n}q^{\frac{(n-1)n}{2}} F_{0}(q) \end{align*} となることが分かります。この関係式より、 \begin{align*} (t,q)_{\infty}(q/t,q)_{\infty} = F_{0}(q) \left(\sum_{n}(-t)^{n}q^{\frac{n(n-1)}{2}} \right) \end{align*} となり、$F_{0}(q)$が未知であることを除いてJacobiの三重積公式が出て来たことになります。つまり、いくつか強引な点はありましたが、射影空間の合同ゼータ関数の函数等式をJacobiの三重積公式(の一部)に関連付けることができました。 次に$F_{0}(q)$を求めますが、これはややテクニカルな考察によります(今回の話の筋とはやや離れるので飛ばしたほうが良いかもしれません)。方針としては、$q$や$t$に特別な値を代入した値を見比べる、という方法をとります。 以下の方法を合同ゼータの文脈に強引に結びつけるのならば、ゼータの特殊値に着目する方法と言えるかもしれません。 ##### 補題1 $S(q,t)=\sum_{n}(-t)^{n}q^{\frac{n(n-1)}{2}}$とおくと、$S(q^4,q^2)=S(q,iq^{1/2})$が成り立つ。 ##### 補題1の証明 \begin{align*} S(q,iq^{1/2}) & = \sum_{n=-\infty}^{\infty}(-1)^{n}q^{\frac{(n-1)n}{2}}(iq^{\frac{1}{2}}) \\ & = \sum_{n=-\infty}^{\infty} (-i)^{n} q^{\frac{n^2}{2}} \\ & = \sum_{m=-\infty}^{\infty} (-i)^{2m} q^{\frac{(2m)^2}{2}} \\ & = \sum_{m=-\infty}^{\infty} (-1)^{m} q^{2m^2} \\ & = S(q^4,q^2). \end{align*} (補題1の証明終了) さらに ##### 補題2 \begin{align*} \frac{(q^2,q^4)_{\infty}(q^4/q^2,q^4)_{\infty}}{(iq^{\frac{1}{2}},q)_{\infty}(q/(iq^{\frac{1}{2}}),q)_{\infty}} = \frac{(q,q)_{\infty}}{(q^4,q^4)_{\infty}} \end{align*} が成り立つ。 ##### 補題2の証明 \begin{align*} \frac{(q^2,q^4)_{\infty}(q^4/q^2,q^4)_{\infty}}{(iq^{\frac{1}{2}},q)_{\infty}(q/(iq^{\frac{1}{2}}),q)_{\infty}} & = \frac{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{4l+2})^{2}}{\prod_{l=0}^{\infty}(1-iq^{l+\frac{1}{2}})(1+iq^{l+\frac{1}{2}})} \\ & = \frac{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{4l+2})^{2}}{\prod_{l=0}^{\infty}(1+q^{2l+1})} \\ & = \prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{2l+1})(1-q^{4l+2}) \\ & = \frac{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{l})}{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{2l})} \frac{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{2l})}{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{4l})} \\ & = \frac{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{l})}{\prod_{l=0}^{\infty}(1-q^{4l})} \\ & = \frac{(q,q)_{\infty}}{(q^4,q^4)_{\infty}}. \end{align*} (補題2の証明終了) これらの補題より、 \begin{align*} \frac{F_{0}(q^4)}{F_{0}(q)} & = \frac{F_{0}(q^4) S(q^4,q^2)}{F_{0}(q) S(q,iq^{1/2})} \\ & = \frac{(q^2,q^4)_{\infty}(q^4/q^2,q^4)_{\infty}}{(iq^{\frac{1}{2}},q)_{\infty}(q/(iq^{\frac{1}{2}}),q)_{\infty}} \\ & = \frac{(q,q)_{\infty}}{(q^4,q^4)_{\infty}} \end{align*} となります。つまり、 \begin{align*} F_{0}(q) (q,q)_{\infty} = F_{0}(q^4) (q^4,q^4)_{\infty} \end{align*} となることから、形式的ベキ級数として \begin{align*} F_{0}(q) (q,q)_{\infty} = 1 \end{align*} となり、 \begin{align*} F_{0}(q) = (q,q)_{\infty} ^{-1} \end{align*} が結論できます。以上から、Jacobiの三重積公式が示せました。 (Jacobiの三重積公式の証明終了) なお、以上のJacobiの三重積公式の証明は、本質的にはA.Weilの「楕円関数論」に書かれているものです。ある意味では、ここに書いたものは、Weilの本に書いてある証明を(わざわざ)合同ゼータ関数の言葉を使って書いただけ、とも言えます。 ### Grassmann多様体の合同ゼータ関数に関する考察 次にGrassmann多様体で同じことをするとどうなるのかを見ます。簡単のため$n$次元空間における$2$次元部分空間全体のなすGrassmann多様体$Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n})$について述べます。まずこの場合、有理点の個数は$q$二項係数を用いて \begin{align*} \binom n 2_q = \frac{(1-q^n)(1-q^{n-1})}{(1-q)(1-q^2)} \end{align*} と書けます。これはたとえば$n=5$では \begin{align*} \binom 5 2_q = \frac{(1-q^5)(1-q^{4})}{(1-q)(1-q^2)}=1+q+2q^2+2q^3+2q^4+q^5+q^6 \end{align*} という多項式になり、これにより合同ゼータ関数${\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{5}),t)$は \begin{align*} {\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{5}),t) = \frac{1}{(1-t)(1-qt)(1-q^2t)^2(1-q^3t)^2(1-q^4t)^2(1-q^5t)(1-q^6t)} \end{align*} となります。実際、定義にもとづいて計算すると、 \begin{align*} {\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{5}),t) &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }} \binom 5 2_{q^k} {\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}(1+q^k+2q^{2k}+2q^{k3}+2q^{4k}+q^{5k}+q^{6k} ){\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}\frac {t^k}{k} + \sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq)^k}{k} +2\sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq^2)^k}{k} +2\sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq^3)^k}{k} +2\sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq^4)^k}{k} +\sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq^5)^k}{k} +\sum_{{k=1}}^{{\infty }}\frac {(tq^6)^k }{k}\right)\\ &= \frac{1}{(1-t)(1-qt)(1-q^2t)^2(1-q^3t)^2(1-q^4t)^2(1-q^5t)(1-q^6t)} \end{align*} と計算できます。 次に形式的に$n \to \infty$とした時、$q$二項係数は($q$を単なる形式的なパラメータと見て) \begin{align*} \lim_{n \to \infty} \binom n 2_q &= \frac{1}{(1-q)(1-q^2)}=1+q+2q^2+2q^3+3q^4+3q^5+\cdots \\ &= \sum_{k=0}^{\infty} ([k/2]+1)q^k \end{align*} というベキ級数になります([]はガウス記号です)。以後、このベキ級数を$\binom \infty 2_q$と書くことにします。このことから、形式的に$n \to \infty$としたときの合同ゼータ関数($Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)$と書きます)は \begin{align*} Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)&=\frac{1}{(1-t)(1-tq)(1-tq^2)^2(1-tq^3)^2(1-tq^4)^3(1-tq^5)^3\cdots}\\ &=\frac{1}{\prod_{k=0}^{\infty}(1-tq^k)^{[k/2]+1}} \end{align*} という無限積になります。 さて、この無限積に関して、合同ゼータ関数${\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),t)$の函数等式から次のような等式が成り立つことが分かります。 #### 命題 関数$G_2(t)$を \begin{align*} G_2(t)=\frac{\prod_{k=0}^{\infty}(1-tq^k)^{[k/2]+1}}{\prod_{k=0}^{\infty}(1-q^{k+3}/t)^{[k/2]+1}} \end{align*} とおくと、各整数$n$について函数等式 \begin{align*} G_2(t)G_2(q^{2n-1}t) = (-t)^{n(n-1)/2}q^{n(n-1)(n-2)/2} G_2(q^nt)G_2(q^{n-1}t) \end{align*} が成り立つ。 #### 命題の証明 一般の合同ゼータ関数${\mathit {Z}}(X,t)$について、Weil予想により、函数等式 \begin{align*} {\mathit {Z}}(X,1/(q^{\text{dim}X}t))= \pm t^{\chi}q^{\chi \text{dim}X/2}{\mathit {Z}}(X,t) \end{align*} が成り立ちます。ここで$\chi$は$X$のEuler数です。$X=Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n})$については、$\text{dim}X=2(n-2)$、$\chi=n(n-1)/2$と計算されるため、$\pm$も考慮したうえで、函数等式は \begin{align*} {\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),1/(q^{2(n-2)}t))= (-t)^{n(n-1)/2}q^{n(n-1)(n-2)/2}{\mathit {Z}}(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),t) \end{align*} となります。さて、ここで$Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n})$の点の個数$\binom n 2_q$と$\binom \infty 2_q$の間には \begin{align*} \binom n 2_q =\frac{(1-q^n)(1-q^{n-1})}{(1-q)(1-q^2)}=(1-q^n)(1-q^{n-1})\binom \infty 2_q \end{align*} という関係があり、これから上記の函数等式を$Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)$の函数等式に書き換える事ができます。実際、$Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),t)$は$Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)$により次の様に書かれます: \begin{align*} Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),t) &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}N_{k}{\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }}\binom n 2_{q^k}{\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }} (1-q^{kn})(1-q^{k(n-1)})\binom \infty 2_{q^k}{\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }} (1-q^{kn}-q^{k(n-1)}+q^{k(2n-1)})\binom \infty 2_{q^k}{\frac {t^{k}}{k}}\right) \\ &= \exp \left(\sum _{{k=1}}^{{\infty }} \binom \infty 2_{q^k}{\frac {t^k-(tq^n)^{k}-(tq^{n-1})^{k}+(tq^{2n-1})^k}{k}}\right) \\ &=\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{2n-1}t)}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n-1}t)Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n}t)}. \end{align*} この式を$Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{n}),t)$の函数等式に代入すれば \begin{align*} \frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{-2(n-2)}t^{-1})Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{(2n-1)-2(n-2)}t^{-1})}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{(n-1)-2(n-2)}t^{-1})Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n-2(n-2)}t^{-1})}&\\ = (-t)^{n(n-1)/2}q^{n(n-1)(n-2)/2}&\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{2n-1}t)} {Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n-1}t)Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n}t)} \end{align*} という式が導かれます。この式は少し複雑ですが、左辺は \begin{align*} \frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{2n-1}t))Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/t)}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{n}t))Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{n-1}t))} \end{align*} と書く事ができるため、函数等式は \begin{align*} \frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/t)}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)}\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{2n-1}t))}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{2n-1}t)}&\\ = (-t)^{n(n-1)/2}q^{n(n-1)(n-2)/2}&\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{n}t))}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n}t)}\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/(q^{n-1}t)}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{n-1}t)} \end{align*} と整理することができます。そこで、 \begin{align*} G_2(t)=\frac{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),q^{3}/t)}{Z(Gr(2,\mathbb{F}_{q}^{\infty}),t)}=\frac{\prod_{k=0}^{\infty}(1-tq^k)^{[k/2]+1}}{\prod_{k=0}^{\infty}(1-q^{k+3}/t)^{[k/2]+1}} \end{align*} と$G_2(t)$を定めれれば、上記の函数等式は$G_2(t)$の函数等式 \begin{align*} G_2(t)G_2(q^{2n-1}t)=(-t)^{n(n-1)/2}q^{n(n-1)(n-2)/2}G_2(q^nt)G_2(q^{n-1}t) \end{align*} を意味することになります。(命題の証明終了) #### 命題についてのコメント 命題の等式は、射影空間の合同ゼータ関数からJacobiの三重積公式を導く際に現れた等式 \begin{align*} (t,q)_{\infty}(q/t,q)_{\infty}= (-t)^{n} q^{\frac{(n-1)n}{2}} (q^{n}t,q)_{\infty} (q/(q^{n}t),q)_{\infty} \end{align*} に対応します。そこで、この関数についても射影空間の合同ゼータ函数の場合と同様に、この等式からJacobiの三重積公式のように(無限積)=(無限和)タイプの等式が導けると嬉しいのですが、射影空間の合同ゼータから出てきた上記等式の$(-t)^n$の部分がGrassmann多様体では$(-t)^{n(n-1)/2}$になっていることなどが障害となり、残念ながら今のところできていません。しかし、ここで函数等式を整理する過程で出てきた$G_2(t)$という関数は、$q$解析で出てくるelliptic gamma function \begin{align*} \Gamma (t;p,q)=\prod _{{m=0}}^{\infty }\prod _{{n=0}}^{\infty }{\frac {1-p^{{m+1}}q^{{n+1}}/t}{1-p^{m}q^{n}t}} \end{align*} において$p=q^2$と特殊化したものの逆数になります。つまり、 \begin{align*} G_2(t)=\Gamma (t;q^2,q)^{-1} \end{align*} です。このようにして、Grassmann多様体の合同ゼータ関数と$q$解析の分野で知られた関数がつながるのは面白く感じますし、特に$G_2(t)$について(無限積)=(無限和)タイプの等式が導けないか考えているところなのですが、、うまくいかず行き詰まっています。 ただ、以上の考察は一般のGrassmann多様体$Gr(k,\mathbb{F}_{q}^{n})$でも成り立ち、同様に無限積に関する非自明な等式が得られます。これらの等式は、無限積を展開して$t$の指数ごとにまとめた無限和の係数の間の関係式になるため、やはり無限和の係数がなにか簡単な形で書けることを示唆しているようにも思えますが、今のところはっきりしたことは分かりません。 また、これはまだ計算していませんが、Grassmann多様体以外でも、性質の良い空間については、有限次元の合同ゼータ函数において形式的に次元を無限次元とすることで「無限次元の多様体」の合同ゼータとみなしたくなる無限積が得られ、さらに(有限次元の)合同ゼータ函数の函数等式から、その無限積に関する非自明な等式が得られることが予想されます。 以上のことについていろいろ考えたいのですが、数論幾何的な知識も$q$解析的な知識も甚だ不足しており、また諸事情あって考える時間もなかなか取れなくなるので、いったんこういった形で公開することとしました。関連する事柄について、なにかコメントいただけると嬉しいです。