# 【新歓】非安定マルチバイブレータの実装 ## マルチバイブレータとは? ### 情報を保持する回路 ![](https://i.imgur.com/MXnbjQY.png) 図の回路を考えてみましょう インバータ(NOT回路)が環状に2つ接続されています。 Qと~Qについて、2つの安定した状態が考えられます。 | Q|~Q| |:----:|:----:| |0|1| |1|0| この回路では、基本的にこれら2つの状態が切り替わることがありません。 つまり、この回路がいずれの状態にあるか、という情報は保持されるのです。 これが、論理回路における記憶素子(SRAM)の基本です。 ただし、このままでは情報を書き込むことができないため、 こんな形(フリップフロップ)や ![](https://i.imgur.com/YIF6WWB.png) こんな形(ラッチ)で使われています。 ![](https://i.imgur.com/R4LltT8.png) ### 電子回路上の実装 冒頭の回路の構成要素だったインバータは、以下のような回路で実現できます。 ![](https://i.imgur.com/7uDjhMH.png) 動作を確認してみましょう。 npn型トランジスタは、B-E間電圧が十分大きいとき、C-E間に電流が流れる素子です。 ![](https://i.imgur.com/V2PRrGV.png) まず、入力がLのときを考えてみましょう(図左)。 BとEの電位がほぼ変わらないため、トランジスタはオフになります。 すると、抵抗に電流が流れないため、出力の電圧は電源電圧と等しくなります。つまりHです。 続いて、入力がHのとき(図右) Bの電位がEの電位に比べ十分大きいため、トランジスタはオンになります。 すると、抵抗に電流が流れて電圧降下が発生し、出力はLになります。 余談: デジタル回路の実装は現在はほぼ、MOSFETを用いた以下のような回路になっています(CMOSといいます)。 デジタル回路として使うにはこちらの方が高速で便利(&インピーダンスも都合がいい)のですが、 今回は普通のデジタル回路とは異なる扱いをするため、バイポーラトランジスタを使います <img src="https://i.imgur.com/VFXIgru.png" width=40%> さて、このトランジスタを使ったインバータで、先ほどの記憶素子を作ってみましょう。 ![](https://i.imgur.com/bqvN2Zr.png) このような回路ができます。 なお、ベースに入っている抵抗は保護用で、スイッチは状態の遷移用です。 スイッチを一時的にONにするか、その箇所にパルスを入力することで、状態を切り替えることができます。 このように、インバータを複数組み合わせてできた、複数の安定状態をもつ回路を**マルチバイブレータ**といいます。 今扱ったものを特に双安定マルチバイブレータといいます。 ### 非安定マルチバイブレータ 双安定マルチバイブレータでは、2つの安定状態はともに時間が経過しても変化しないのですが、ここで、そうでない準安定状態を考えると、面白いことができます。 以下の回路をみてください。 先程の回路ではベースに抵抗が入っていましたが、今回はCR回路が入っています。 ![](https://i.imgur.com/q7D9ZJE.png) 片方の安定状態に遷移してから、コンデンサの放電が始まり、十分時間が経過すると反対側のトランジスタのB電位が高くなり、もう一方の安定状態に遷移します。 これを繰り返すことで、周期的な入力なしに振動を始めるのです[^1]。 この発振回路を**非安定マルチバイブレータ**といいます。 [^1]:トランジスタがONになっている間にコンデンサを十分充電するため、R<sub>1</sub><<R<sub>2</sub>である必要があります この回路をLTspiceでシミュレートした結果がこちら ![](https://i.imgur.com/LERp15a.png) B電位のグラフに、指数関数に似た曲線があるのが分かりますか? ![](https://i.imgur.com/WkBhx9D.png) ここでコンデンサが放電されているわけですね。 そして、B電位が0.6V辺りになると反対側のトランジスタがONになり、安定状態の遷移が起こるわけです。 さて、こんな非安定マルチバイブレータを使ってLEDを点滅させる回路を作ってみましょう!!