## B 現代社会の地理的考察 > この大項目は,「現代世界の現代世界の系統地理的考察」の学習成果を踏まえ,現代世界を構成する諸地域を主な学習対象とし,選択した地域の地域性と諸課題を捉える学習などを通して,現代世界の諸地域の地理的認識を深めるとともに,現代世界の諸地域を地誌的に考察する方法を身に付けることを主なねらいとしている。このねらいを達成するため,この大項目は「(1)現代世界の地域区分」,「(2)現代世界の諸地域」という二つの中項目で構成している。 ### (1) 現代世界の地域区分 1. #### 現代世界の地域区分 >位置や分布,地域などに着目して,課題を追求したり解決したりする活動を通して,次の事項を身につけたりできるよう指導する >##### ア 次のような知識及び技能を身につけること。 >>* (ア)世界や世界の諸地域に関する各種の主題図や資料を基に,世界を幾つかの地域に区分する方法や地域の概念,地域区分の意義などについて理解すること。 >>* (イ)世界や世界の諸地域について,各種の主題図や資料を踏まえて地域区分をする地理的技能を身に付けること。 >##### イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。 >>* (ア)世界や世界の諸地域の地域区分について,地域の共通点や差異,分布などに着目して,主題を設定し,地域の捉え方などを多面的・多角的に考察し,表現すること。 >> >(内容の取り扱い) >##### イ 内容のBについては,次のとおり取り扱いものとする。 >>* (ア)(1)については,次のとおり取り扱うこと。 >>現代世界が自然,政治,経済,文化などの指標によって様々に地域区分できることに着目し,それらを比較対照することによって,地域の概念,地域区分の意義などを理解するようにすること。 > >この中項目の主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。 >この中項目は,位置や分布,地域などに関わる視点に着目して,世界や世界の諸地域の地域区分を多面的・多角的に考察し,表現する力を育成するとともに,地域区分の方法や地域の概念,地域区分の意義などを理解し,そのために必要な技能を身に付けられるようにすることが求められている。 >この中項目における位置や分布に関わる視点としては,例えば,世界や世界の諸地域に広く見られる事象を,それが生起する地点や広がりの規則性,傾向性から捉えることなどが考えられる。 >また,地域に関わる視点としては,例えば,単一あるいは複数の事象の共通点や相違点によって区分される意味ある広がりを,時間的にも可変的な空間的なまとまりといった側面から捉えることなどが考えられる。 >この中項目で身に付けたい事項については,次のとおりである。 >この中項目で身に付けたい「知識」に関わる事項として,ア(ア)「世界や世界の諸地域に関する各種の主題図や資料を基に,世界を幾つかの地域に区分する方法や地域の概念,地域区分の意義などについて理解すること」が挙げられる。 >このうち,**世界や世界の諸地域に関する各種の主題図や資料**については,ここで取り上げる主題図や資料には様々なものがあり,そこで用いられる地域区分の方法が一つではないこと,地域区分には目的があって目的によって異なる指標が用いられること,様々な指標を使って地域が区分されることが,ここでの学習の前提として位置付けられることを意味している。 >**世界を幾つかの地域に区分する方法や地域の概念,地域区分の意義**の中の「地域に区分する方法」については,例えば,「自然,政治,経済,文化などの指標」(内容の取扱い)を取り上げて作成した様々な分布図を利用して,その指標の等質性に注目したり,その指標の機能的な関係に注目したりして地域区分することもできる。また,ある分布図を基に,特色ある地域だけを抽出するような地域区分もあるし,分布図を重ね合わせたり,複数の指標を組み合わせたりして地域を取り出すような方法もある。 こうした地域区分の方法を理解する学習を通して,多様な地域区分が可能であることに気付くと同時に,その結果として,多様な「地域の概念」を理解し,現代世界の多面性に気付くことが期待される。すなわち,ある地域区分で見ていた世界が,別の地域区分を用いて見直してみると異なって見えてくるような学習が重要であり,そのような多様な地域観が,次の「(2)現代世界の諸地域」における学習につながるよう工夫する必要がある。 「地域の概念」については,具体的に地域区分を行い,地域を設定する過程を通して,または多様な地域区分図の比較対照を行い,現代世界の諸地域が様々に見いだされることを通して,具体的に地域概念を学ぶことが重要である。「地域区分の意義」については,地域区分は世界を地理的に理解するための方法や枠組みであり,世界を様々な方法によって地域に区分し,その区分された地域を具体的に捉えることによって世界を様々な側面から理解することにつながるとともに,多様な方法で様々に区分された地域の配置や空間構造によっても世界を地理的に理解することにもつながるということを示している。この中項目で身に付けたい「技能」に関わる事項として,ア(イ)「世界や世界の諸地域について,各種の主題図や資料を踏まえて地域区分をする地理的技能を身に付けること」が挙げられる。 このうち,**各種の主題図や資料を踏まえて地域区分をする地理的技能を身に付ける**の中の「各種の主題図や資料を踏まえて」については,目的に応じて適切な主題図や資料を選択して使用することの大切さを示している。また,「地域区分をする地理的技能を身に付ける」については,地域区分によって現代の世界を大観するとともに,それぞれの地域の地域性を理解できるよう,目的に応じて地域区分を行う技能を身に付けることを意味している。 このうち,**地域の共通点や差異,分布などに着目して**については,世界や世界の諸地域の地域区分において,地域の捉え方などを考察する際に着目する視点を示したものである。ここでの視点として,例えば,ある指標を基に他と異なる共通した性質をもつ等質地域としての空間的なまとまりを見出すことなどに留意することが大切である。ここでは,ある指標に基づいて作成された地域区分と,他の指標に基づいて作成された地域区分を比較し,共通点や差異,分布の傾向性に着目して,多面的・多角的に考察し,その結果を表現できるようにすることが考えられる。また,この分布の傾向性については,地理的な事象の分布の粗密を調べることで,中心と周辺からなる機能地域としての圏構造を見出すことなどが考えられる。 **主題を設定し,地域の捉え方などを多面的・多角的に考察し,表現する**については,ここで取り上げる主題として,「実質地域としての地域の捉え方」などが考えられる。例えば,ここでの学習の導入として「世界はどのように地域区分されるだろうか」といった問いを立てて,地域区分の指標として,例えば,宗教,国家間の結び付き,経済成長率などを取り上げ,地域区分図を作成するといった学習活動が考えられる。その上で,大陸規模の地域区分としてユーラシア大陸を地域区分するに当たり,例えば,「ロシア連邦はアジアなのだろうか,それともヨーロッパなのだろうか」といった問いを立てて,中学校社会科地理的分野の大項目Bの「(2)世界の諸地域」の学習においては,「アジア州又はヨーロッパ州のいずれかに位置付けて扱うこととなる」(学習指導要領解説)とされているロシア連邦の多様性を踏まえて,実質地域による地域区分の意味や意義を考察するといった学習活動が考えられる。 >また,国家規模の地域区分としてアメリカ合衆国を地域区分するに当たり,例えば,「アメリカ合衆国本土はいくつに地域区分すると地域的な特色がつかみやすくなるだろうか」といった問いを立てて,州を単位として北東部,中西部,南部,西部に分けた区分と,北緯 37 度と西経 100 度といった任意の緯線と経線によって分けた区分などを比較することで,目的に応じて様々な地域区分が存在することなどを考察するといった学習活動も考えられる。 さらに,「南北アメリカは,従来,州や大陸に着目して二つに地域区分されてきたが,果たして二つに地域区分することが適切なのだろうか」という問いを立てて,経験的に用いられてきた地域区分の方法や意味,その数などを批判的に吟味し,考察するような発展的な学習活動も考えられる。 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。 **現代世界が自然,政治,経済,文化などの指標によって様々に地域区分できることに着目し,それらを比較対照する**(内容の取扱い)については,ここに例示された異なる指標を用いて区分された地域を,見比べたり,重ね合わせたりすることによって,多様で多彩な側面をもつ現代世界の構造に気付き,地域の概念や地域区分の意義とともに,結果としてその有用性に気付くことが大切である。その際,大項目Aの「現代世界の系統地理的考察」を踏まえて,世界の諸地域の特色や現代世界の諸課題を様々な指標による地域区分図に反映させて取り上げるとともに,この地域区分の多様性や現代世界の多面性を学ぶことで,次の「(2)現代世界の諸地域」において学習される諸地域の位置付けについても,具体的に考察できるように学習を工夫する必要がある。 ### (2) 現代世界の諸地域 2. (2) 現代世界の諸地域 >空間的相互依存作用や地域などに着目して,課題を追究したり解決したりする活動を通して,次の事項を身に付けることができるよう指導する。 >##### ア 次のような知識及び技能を身につけること。 >>* (ア)幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,諸地域に見られる地域的特色や地球的課題などについて理解すること。 >>* (イ)幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法などについて理解すること。 >##### イ 次のような思考力,判断力,表現力等を身に付けること。 >>* (ア)現代世界の諸地域について,地域の結び付き,構造や変容などに着目して,主題を設定し,地域的特色や地球的課題などを多面的・多角的に考察し,表現すること。 >> > (内容の取り扱い) > ##### イ 内容のBについては,次のとおり取り扱いものとする。 >>* (イ) (2)については,次のとおり取り扱うこと。 >>ここで取り上げる地域は,中学校社会科地理的分野の「世界の諸地域」の学習における主に州を単位とする取り上げ方とは異なり,(1)で学習した地域区分を踏まえるとともに,様々な規模の地域を世界全体から偏りなく取り上げるようにすること。また,取り上げた地域の多様な事象を項目ごとに整理して考察する地誌,取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察する地誌,対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察する地誌の考察方法を用いて学習できるよう工夫すること。 >> > この中項目の主なねらいや着目する視点などについては次のとおりである。 この中項目は,空間的相互依存作用や地域などに関わる視点に着目して,現代世界の諸地域や地球的課題を多面的・多角的に考察し,表現する力を育成するとともに,区分した諸地域に見られる地域的特色や地球的課題,地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法を理解できるようにすることが求められている。 この中項目における空間的相互依存作用に関わる視点としては,例えば,地域区分された現代世界のある地域における地域的特色や地球的課題の現状を,個々の事象の地域的な結び付きや広がりから捉えることなどが考えられる。 また,地域に関わる視点としては,例えば,地域区分された現代世界のある地域におけ る地球的課題を,地域の構造や変容,地域性を踏まえた課題解決の方向性といった側面から捉えることなどが考えられる。 この中項目で身に付けたい事項については,次のとおりである。 この中項目で身に付けたい「知識」に関わる事項として,まず,ア(ア)「幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,諸地域に見られる地域的特色や地球的課題などについて理解すること」が挙げられる。 このうち,**幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域**については,中学校社会科地理的 分野での学習や「(1)現代世界の地域区分」での学習成果を踏まえ,現代世界の中から複数の様々に切り取られた地域を選ぶ必要があることを意味している。また,取り上げる地域は,行政的な区分や州による区分といった形式的な地域に捉われることなく,例えば,地球的課題に関連する指標によって地域区分された特徴が顕著な地域や対照的な地域を取り上げるなど様々な対象地域が考えられることに留意する必要がある。 **諸地域に見られる地域的特色や地球的課題などについて理解する**については,現代世界は地球規模で進行する様々な課題を抱えており,そのことが現代世界の大きな特色の一つとなっている。そうした地球的課題は地域によって多様な状況や異なる課題が認められ,地球的課題の現状認識を深める上でも,課題の所在や解決の方向性を検討する上でも,地域的特色を踏まえて考察することが効果的であり,そうした地球的課題についての理解が現代世界の地理的認識を深めることにも効果的である。その際,「地域的特色や地球的課題」についての理解をより深める上で必要であれば,地理の総合性に留意して他の諸科学の成果なども活用しながら現代世界の地理的認識を深めるよう工夫することが大切である。 この中項目で身に付けたい「知識」に関わる事項として,また,ア(イ)「幾つかの地域に区分した現代世界の諸地域を基に,地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法などについて理解すること」が挙げられる。 このうち,**地域の結び付き,構造や変容などを地誌的に考察する方法**の中の「地域の結び付き,構造や変容」については,地域は,グローバル化する国際社会において,地域的,国家的,あるいは国際的な結び付きによって相互に影響し合うとともに,地域に見られる様々な地理的な事象は他の事象と構造的に結び付いて意味をなしており,それらは時代とともに変化するものと変化しないものがあるということに留意する必要がある。また,「地誌的に考察する方法」については,「取り上げた地域の多様な事象を項目ごとに整理して考察」(内容の取扱い)したり,「取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察」(内容の取扱い)したり,「対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察」(内容の取扱い)したりすることを意味している。 この中項目で身に付けたい「思考力,判断力,表現力等」に関わる事項として,イ(ア) 「現代世界の諸地域について,地域の結び付き,構造や変容などに着目して,主題を設定し,地域的特色や地球的課題などを多面的・多角的に考察し,表現すること」が挙げられる。 このうち,**地域の結び付き,構造や変容などに着目して**については,現代世界の諸地域について地域的特色や地球的課題などを考察する際に着目する視点を示したものである。 ここでの視点として,例えば,グローバル化する国際社会における地域的,国家的,あるいは国際的な結び付きや,自然環境,資源,産業,交通・通信,観光,人口,都市・村落,生活文化,民族・宗教などの諸事象が,規則性,傾向性をもちながら構造的に結び付いていること,また,それらは時代とともに変化するものがあることなどに留意することが大切である。地域の景観や諸事象の変化のみにとらわれることなく,時代の趨勢や大きな出来事などを踏まえながら,地域的,国家的,あるいは国際的な地域の結び付き,地理的な事象の結び付きやその変容などに留意して,自然,政治,経済,文化などの指標を踏まえて多面的 ・ 多角的に考察することが大切である。 **主題を設定し,地域的特色や地球的課題などを多面的・多角的に考察し,表現する**については,ここで取り上げる主題として,「欧州連合(EU)経済圏の変容」などが考えられる。例えば,「なぜ,ヨーロッパで分裂と統合が見られるのだろうか」といった問いを立てて,EU 域内の経済的な地域格差,政治的動向,民族・宗教などの諸事象を有機的に関連付けて考察するような学習活動が考えられる。このような学習活動を通して,移民などに関わる民族 ・ 宗教的な対立や不平等などが,国際社会において人類全体で取り組まなければならない地球的課題であり,持続可能な開発に向けた取組であることとも結び付けて考察することが大切である。ここでの学習では,適切な地域区分を基に取り上げた地域を地誌的に考察し,地域的特色や地球的課題を理解することにふさわしい主題を,地域の結び付き,構造や変容などに着目して設定することが大切である。 「内容の取扱い」などに示された留意事項については,次のとおりである。 **ここで取り上げる地域は,中学校社会科地理的分野の「世界の諸地域」の学習における主に州を単位とする取り上げ方とは異なり,(1)で学習した地域区分を踏まえる**(内容の取扱い)については,中学校社会科地理的分野での学習や「(1)現代世界の地域区分」の学習において自然,政治,経済,文化などの指標によって区分された地域区分を踏まえて,形式的な州を単位とする地域ではなく,様々な指標に基づいて地域区分された様々な規模の地域を取り上げるよう留意する必要があることを意味している。 **様々な規模の地域を世界全体から偏りなく取り上げるようにする**(内容の取扱い)については,ある場合には,一つの地域区分に基づいて複数の地域を取り上げて,おおよそ世界全体を偏りなく捉えるようにすることを意味しており,ある場合には,一つの地域区分に基づいて二,三の地域を取り上げ,別の地域区分に基づいて別の地域を取り上げ,結果として複数の地域区分に基づいて大小様々な規模の地域を取り上げることによって,おおよそ世界全体を偏りなく捉えるようにすることを意味している。また,本項目のねらいは羅列的な知識を身に付けることではない。したがって,世界全体を隈なく取り上げるものではないことに留意する必要がある。さらに,様々な規模の地域を取り上げる際には,既述のようにそれらの地域が地域的特色や地球的課題をより典型的に表していると思われる地域であるか,地域的特色や地球的課題を対照的又は類似的に表していると思われる地域であるか,地誌的な考察方法を身に付けることができると思われる地域であるか,といったことを検討することも必要である。 **取り上げた地域の多様な事象を項目ごとに整理して考察する地誌,取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察する地誌,対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察する地誌の考察方法を用いて学習できるよう工夫する**(内容の取扱い)については,「取り上げた地域の多様な事象を項目ごとに整理して考察」するとは,地域に見られる様々な事象を項目(例えば,自然環境,資源,産業,交通・通信,観光,人口,都市・村落,生活文化,民族・宗教など)ごとに取り上げ,整理し,それら取り上げられた事象全体を通して地域的特色を見いだしたり,地球的課題を学習したりすることを意味している。また,「取り上げた地域の特色ある事象と他の事象を有機的に関連付けて考察」するとは,地域に見られる特徴的な事象を取り上げ,その事象に関連する様々な他の事象を関連付け,特徴的な事象のもつ意味を通して地域的特色を見いだしたり,地球的課題を学習したりすることを意味している。さらに,「対照的又は類似的な性格の二つの地域を比較して考察」するとは,取り上げた地域と対照的又は類似的と思われる他地域とを比較することによって,それぞれの地域の地域的特色を見いだしたり,地球的課題を学習したりすることを意味している。ここでの学習では,これらの内容の取扱いに示された地誌的に考察する方法を身に付けるよう工夫する必要がある。 次に,この中項目における学習活動の展開例を示す。これらは,あくまでも例示であり,各学校において,例示と異なる主題や問い,取り上げ方で指導を行うことができる。
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