示したり,学級だよりや学年だより,学科だよりの記事にしたりすること,最終場面の発表会はもちろん中間発表会を公開することなども考えられる。ポスターセッションやプレゼンテーションの発表資料,ポートフォリオなどの成果物などを校内のネットワーク(LAN)で保存・共有することも考えられる。また,全教職員で実践の状況を紹介し合い,互いに学び合うことを目的としたワークショップ型の研修を行うことなども,学校全体の実施状況の理解を深めると同時に,教職員の協働性を高めることにつながる。 ### (2)実践を支える運営体制 総合的な探究の時間の全体計画等の作成や評価,各分担及び学年間・学科間の連絡・調整,実践上の課題解決や改善等を図るため,関係教職員で組織するものが,校内における推進委員会である。構成については学校の実態によって様々なものが考えられるが,例えば,副校長や教頭,教務主任,研究担当,学年主任,学科主任,進路指導主事,生徒会担当,総合的な探究の時間コーディネーターなどが挙げられる。協議内容によっては,養護教諭,司書教諭,学校図書館司書,情報担当などを加える場合も考えられる。推進委員会では,これらの関係教職員の共通理解や連携強化のために連絡・調整を図るとともに,全体計画をはじめとする各種計画の作成・運用・評価についての協議,校外の支援者との連携のためにコーディネート役の機能をもたせることも有効である。なお,全ての教職員が協力して力を発揮するためには,校長のビジョンとリーダーシップの下,各教科をつないでカリキュラムをデザインし,マネジメントのできるミドルリーダー的な教員がコーディネーター役を果たすことが望まれる。こうした教員が教育活動全体を俯瞰し,学校全体のために動くことができるよう,校務全体の効率化や適切な分担等を行うことが求められる。 ### ③ 授業担当者による会議 総合的な探究の時間では,学年ごと,学科ごとに年間指導計画や単元計画等を作成したり,実施したりする学校が多い。授業を実践していく場合,学年や学科で共通理解を図りながら展開していくことが多く,異なる学年や学科で合同して行う場合も,授業担当者による連携が重要になる。このことから,授業担当者による会議は,総合的な探究の時間を運営する上で重要な役割をもつといえる。したがって,授業担当者による会議を週時程に位置付けるなどの工夫をして,円滑に学習活動が実施されるようにする必要がある。授業担当者による会議は,ホームルーム間,学科間の連絡・調整のみならず指導144第11章総合的な探究の時間を充実させるための体制づくり計画の改善や実践に伴って次々と生まれる諸課題の解決や効果的な指導方法等について学び合うなど,研修の場としても大切な役割が期待される。また,他教科等と総合的な探究の時間で身に付けた資質・能力を相互に関連付け,学習や生活において生かし,それらが総合的・統合的に働くようにできているか検証する場としても期待できる。さらに,専門的見地から生徒が取り組んでいる学習について解説を加えることで,生徒の学習状況を共に理解することにつながり,より高度な学習活動を実現することも可能となる。なお,授業担当者による会議では,実践上の悩みや疑問が率直に出され,互いに自由な雰囲気で話し合えるよう配慮することが大切である。そのことが,教師同士の協働性を高め,総合的な探究の時間の日常的な改善を容易にしていく。 ## 3 教職員の研修  総合的な探究の時間を充実させ,その目標を達成する鍵を握るのは,指導する教師の指導計画の作成と運用の能力,そして,授業での指導力や評価力などである。さらに,生徒や学校,地域の実態等に応じて特色ある学習活動を生み出していく構想力も必要となる。 また,総合的な探究の時間は,教師がチームを組んで指導に当たることによって,生徒の多様な学習活動に対応できることから,教職員全体の指導力向上を図る必要もある。加えて,各学校の教育目標の実現や目指す資質・能力の育成について教科・科目等横断的な視点からカリキュラムをデザインする力も求められている。今後,各学校の校内研修においては,校長のリーダーシップの下,学習指導の改善のみならず,教育課程全体を俯瞰して捉え,教育課程の改善を図ることをねらいとした総合的な探求の時間の研修を積極的に取り入れることが必要である。したがって,年間の職員研修計画の中に,総合的な探究の時間のための校内研修を確実に位置付け実施することが極めて重要になる。特に,今回の改訂により,総合的な探究の時間の目標や内容は,各学校の教育目標を踏まえて設定されることとされ,教科・科目等横断的なカリキュラム・マネジメントの軸となることが明らかとなったことからも,学校全体で行う研修に位置付ける意義がある。中には,総合的な探究の時間に関わる学年研修会を週時程に位置付け,生徒の学習状況について学び合い,成果をあげている学校もある。校内研修のねらいや内容は,各学校の職員構成や実践上の課題等に応じて適切に定めていくべきものである。学習指導要領及び本解説を初めとして,文部科学省が提供する指導資料などを参考に,総合的な探究の時間の趣旨や内容等についての理解を教職員全体で確かにすることに加え,次の例を参考に,実践を進める教師の必要感を生かした校内研修計画を立てることが大切である。 ○総合的な探究の時間の目標及び内容について ○総合的な探究の時間の教育課程における位置付けや各教科・科目等,特別活動及び道徳の全体計画との関連について ○全体計画,年間指導計画,単元計画の作成について ○パフォーマンス評価やポートフォリオ評価等の評価について ○教材開発の在り方や地域素材の生かし方 ○国連の持続可能な開発目標(SDGs)との関連について ○外部との連携について ○学習活動時の安全確保について ○総合的な探究の時間のためのICTの活用についてなど なお,校内研修は全教師が一堂に会して実施する場合もあるが,学年単位や学科単位,課題別グループ単位等の少人数で,実践上の課題に応じて弾力的に,そして継続的に実施していくことも必要である。また,研修方法については,次の例を参考に,各学校の実態 や研修のねらいに応じて工夫すべきである。 ○校内での研修例 ・グループ研修:指導計画作成や教材作りの演習,テーマに基づくワークショップなど ・全体研修:視察報告会,講師を招いての講義など ○校外での研修例 ・視察研修:他校で開催される公開研究会の参加,先進校の視察など ・実地体験研修:生徒の体験活動の臨地研修とその評価など ・教材収集研修:地域における教育資源となるものの観察や調査など授業研究では,生徒の学習に取り組む姿を通して教師の指導について評価し,指導力の向上を図ることが必要である。また,総合的な探究の時間の授業を公開し,互いに学び合えるようにしておくことも大切である。さらに,総合的な探究の時間の全体計画,年間指導計画,単元計画,実践記録,生徒の作品や論文等の写し,映像記録,参考文献等を整理・保存し,いつでも活用できるようにしておくことも,研修の推進にとって有効である。このようにして取り組む校内研修は,教師間の協働性を高める上でも重要である。一方,校長は校外で行われる研修会や研究会に積極的に職員を派遣し,その成果を各学校の実践に役立てることが大切である。また,近隣の学校同士で実践交流を行い,互いに学び合う機会を設けることも,実践力の向上に役立つ。なお,平成 28 年 12 月の中央教育審議会答申では,総合的な探究の時間の学習・指導の改善充実や教育環境の充実等における必要な条件整備の一つとして,「各学校において,全ての教職員が協力して力を発揮するため,校長のビジョンとリーダーシップの下,各学校が育成しようとする生徒の姿から必要な資質・能力を明らかにし,各教科・科目等をつないでカリキュラム・デザインができるミドルリーダー的な教員が育つことが期待される」ことを挙げている。教育委員会等は,所管の教職員の研修効果が一層上がるよう,十分な情報提供をしたり研修会を開催したりすることが望まれる。 # 第3節 年間授業時数の確保と弾力的な運用 ## 1 年間授業時数の確保と配当 ### (1)授業時数の確保  第1章総則第2款の3の(3)においては「各教科・科目等のそれぞれの授業の1単位時間は,各学校において,各教科・科目等の授業時数を確保しつつ,生徒の実態及び各教科・科目等の特質を考慮して適切に定めるものとする」としている。総則でいう「授業時数を確保しつつ」という意味は,あくまでも授業時数の1単位時間を50分とし35単位時間の授業を1単位として計算した標準の授業時数を確保することである。各教科・科目等及び総合的な探究の時間の単位は,その単位数に見合う授業の時数を行うことを条件として認定されるものであり,これを確保することは前提条件として考慮されなければならない。つまり,卒業までに,3〜6 単位に見合う標準授業時数105〜210単位時間を確保し,実施しなければならないことを示している。そのためにも,年間指導計画に授業時数を明確に示すとともに,時間割に総合的な探究の時間を位置付けることが欠かせない。 ### (2)授業時数の配当 総合的な探究の時間の授業時数の配当については,卒業までを見通して3〜6単位(105〜210単位時数)を確保するとともに,学校や生徒の実態に応じて,適切に配当することとしている。卒業までの各年次の全てにおいて実施する方法のほか,特定の年次において実施する方法も可能である。また,年間35週行う方法のほか,特定の学期又は期間に行う方法を組み合わせて活用することも可能である。また,通信制の課程における扱いは,学習指導要領第1章総則2款の5に規定している。なお,総合的な探究の時間では,特に,1単位時間や年間を見通した授業時数の弾力的な取扱いが必要となる。したがって,授業時数の確保が行われているかどうかを確認することが,一層重要となる。具体的には,週単位,月単位,学期単位などに応じて授業時数の確認を行い,年間授業時数が確保されているかどうかを十分把握しなければならない。 ## 2 弾力的な単位時間の運用 総合的な探究の時間では,体験活動が重視され学習活動が多様に展開される。また,地域の特色などを生かした学習活動が行われる。生徒の学習活動は校外に出てダイナミックに行われたり,季節の変化や学校行事に応じて集中的に行われたりする。したがって,1単位時間を50分で実施する場合もあれば,75分や100分に設定する場合もある。また,毎週定期的に繰り返される時期もあれば,ある時期に集中的に実施することなどもある。学習指導要領第1章総則第 2款の3(3)キにおいては,1単位時間を50分とし,35単位時間の授業を1単位として計算することを標準としており,「各教科・科目等の授業時数を確保しつつ」という意味はあくまでも1単位時間を50分とし,35単位時間の授業を1単位として計算した標準授業時数を確保するという意味であることに留意する必要がある。 総合的な探究の時間を実施する際の具体的な授業の 1 単位時間は,指導内容のまとまりや学習指導の内容を考慮して教育効果を高める観点に立って,教育的な配慮に基づき定められなければならない。特に,総合的な探究の時間においては,授業の1単位時間を50分にこだわらず,弾力的に扱う柔軟な運用が求められる。なお,授業の1単位時間の運用については,学校の管理運営上支障を来すことのないよう教育課程全体にわたって検討を加える必要がある。 ## 3 授業時数に関する留意点 総合的な探究の時間の授業時数を確実に確保し,しかも柔軟に運用していくには次のようなことに留意する必要がある。 ### (1)年間指導計画及び単元計画における授業時数の配当 単元において,どの活動に何時間の授業時数が必要なのかを算出し,年間指導計画及び単元計画に授業時数を適正に配当しておくことが第一に必要である。その際,季節や植生の変化,地域の行事や季節に応じた生産活動などに目を向けて工夫を単元計画を各週の計画に位置付ける。この計画は,基本的には時間割を踏まえることになるが,時期に応じて,学習活動に応じて柔軟に対応することになる。まずは,計画を立て,必要な授業時数を割り当てるとともに,実際の実施した時数を積算しながら,適切な授業時数の運用になっているかを管理していかなければならない。 ### (3)学期ごとの実績の適切な管理 授業時数の管理については,実施しながら日常的に適切かどうかを見直していくものの,学期末などの大きな節目に実施時数を積算し,学習活動の進展の状況と照らし合わせることが必要となる。そのことにより,その後の学習活動の展開が変わることもあるからである。様々な体験活動や観察・実験・実習,調査・研究,発表や討論などの学習活動を重視する総合的な探究の時間は,ややもすると授業時数が不必要に増大していくことがある。短期的かつ長期的な見通しをもった計画作りと適切な時数管理,それらを通した学習活動の見直しが必要である。 # 第4節 環境整備 総合的な探究の時間に生徒が意欲的に取り組み,そこでの学習を深めていくには,学習環境が適切に整えられていなければならない。総合的な探究の時間では,多様な学習活動が行われるため,生徒の資質・能力が十分に発揮されるような学習環境を整えなければならない。そこで,本節では,学校全体で整備しておかなければならない施設・設備等の物的な環境整備の在り方,及び教室内の学習環境の整備について要点を述べる。 ## 1 学習空間の確保 総合的な探究の時間では,探究の過程で,ホームルーム内はもろん,学年内,学科内,さらには異学年間での学習活動などが展開されることがある。また,ものづくりや発表のための準備など,多様な学習活動が行われる。こうした学習活動を行う際,教室以外にも学習活動を行うスペースが確保されていると,スムーズに展開しやすい。例えば,多目的スペースなどにミーティングテーブルを設置したり移動黒板を用意したりプロジェクターを設置したりするなど,多様な学習形態に対応できる空間を確保する工夫が考えられる。校内に余裕教室がある場合などは,学習目的に応じて有効に活用することが望まれる。このような学習スペースには,総合的な探究の時間の学習活動の流れ図や活動の記録写真などを展示したり生徒の作品を展示したりして,学習への関心や意欲を高めることができる。そこには,総合的な探究の時間に活用する教材や資料,実物や模型などを展示し,いつでも生徒が活用できるように用意しておくこと,生徒の学習活動に必要な道具や材料などを常備しておくことなども考えられる。また,探究活動や学習活動に応じて,理科室,音楽室,美術室,調理室,コンピュータ室等の特別教室が使えるよう,使用教室の割当てを定めていくことも大切である。教室内の学習環境の整備に当たっては,単なる空間の確保だけにとどまることなく,生徒の学びが主体的・対話的で深い学びにつながるようにしなければならない。 ## 2 学校図書館の整備 学習の中で疑問が生じたとき,身近なところで必要な情報を収集し活用できる環境を整えておくことは,探究活動に主体的に取り組んだり,学習意欲を高めたりする上で大切な条件であり,その意味からも学校図書館は,生徒の想像力を培い,学習に対する興味・関心等を呼び起こし,豊かな心や人間性,教養,創造力等を育む自由な読書活動や読書指導の場である「読書セ そのため,学校図書館には,総合的な探究の時間で取り上げるテーマや生徒の探究課題に対応して,関係図書を豊富に整備する必要がある。学校図書館だけでは蔵書に限りがあるため,学術情報等のデータベースへアクセスすることや外部の公立図書館との連携を構築することも大切である。自治体の中には,公立図書館が便宜を図り,学校での学習状況に応じた図書の拡充を行っているところや,学校が求める図書を定期的に配送するシステムを取っているところもある。地域と一体となって学習・情報センターとしての機能を高めたい。学校図書館では,生徒が必要な図書を見付けやすいように日頃から図書を整理したり,コンピュータで蔵書管理したりすることも有効である。図書館担当は,学校図書館の物的環境の整備を担うだけでなく,参考図書の活用に関わって生徒の相談に乗ったり必要な情報提供をしたりするなど,生徒の学習を支援する上での重要な役割が期待される。教師は 全体計画及び年間指導計画に学校図書館の活用を位置付け,授業で活用する際にも図書館担当と十分打合せを行っておく必要がある。 加えて,こうした学校図書館の環境を,生徒が自ら活用できるようにしたい。そのためには,どこに行けばどのような資料が入手できるのか,どのような観点から必要な情報を探すのかといったことができるようになる必要がある。このことは,国語科における読書指導や特別活動における主体的な学習態度の形成と学校図書館の活用に係る指導と緊密に関連付け,成果を上げていく工夫も大切である。一方,総合的な探究の時間において生徒が作成した発表資料や論文集などを,学校図書館等で蓄積し閲覧できるようにしておくことも,生徒が学習の見通しをもつ上で参考になるだけでなく,優れた実践を学校のよき伝統や校風の一つにしていく上で有効である。なお,高等学校の図書館の蔵書数は,小・中学校と比較して格段に多く,地域に関する資料等も豊富であることが多い。その意味からも,高等学校の図書館は,地域の小・中学校が積極的に活用できるよう開かれた図書館であることも大切である。 ## 3 情報環境の整備 タブレット型端末を含むコンピュータをはじめとする情報機器は,その有効な活用によって,総合的な探究の時間における生徒の情報検索や情報活用,情報発信の可能性を広げ,学習意欲や学習効果の向上に役立つ。コンピュータ等の情報機器が集中してコンピュータ室に配置されている場合には,コンピュータ室を有効に活用できるよう,適切に調整する必要がある。その際,例えば,2週間単位程度で利用希望調査を行って調整を図るなどして,できる限り生徒の学習状況に応じる工夫もある。また,複数のホームルームが同時に使えるように,コンピュータ等を余裕教室等に分散配置する方法も考えられる。一方,コンピュータ室だけでなく,教室やオープンスペース等にインターネットへの接 続環境を整えておくことで,生徒が必要なときに直ちに調査活動に当たることができる。また,校内にサーバーを設置し,全てのコンピュータを接続することで,デジタルコンテンツを共有したり,生徒が取材した写真やビデオなどを蓄積したりすることにつながる。学校によっては,コンピュータ室が日常的に利活用できない状況もあるが,生徒が適切に利用できるよう指導した上で,コンピュータ室を昼休みや放課後等も開放し,生徒が積極的に利用できるようにしておきたい。また,生徒が所有するスマートフォンやタブレット端末等を,ルールを定めた上で,活用させることも考えられる。なお,情報環境の整備については,情報と情報技術を適切に活用する態度を養う視点も重要である。様々な情報に接し,自らも生み出し,共有していくことが求められる社会の中で,安心・安全に情報の利活用を行うことができる情報セキュリティの確立や,情報モラルを含めた情報活用能力を身に付けていくことが必要である。さらに,生徒による調査活動の記録のため,デジタルカメラやデジタルビデオカメラ,タブレット型端末や IC レコーダーなどを整備しておく必要がある。発表活動を効果的に行うために,音声や映像の編集,プレゼンテーション等のソフトやプロジェクターなどを整備しておくことも望まれる。また,生徒間の情報共有や協働的な学習を促すためには,複数の生徒が同じ画面を見ながらそれぞれのアイデアを記入することができるようなツールや他の生徒の考えにコメントを付けられるような仕組みを用いることも考えられる。ワープロや表計算だけでなく,アイデアを視覚的に表したり整理したりできるようなソフトも有効である。こうした機器等の物的条件整備のほか,校内研修や地域の教育センター等による研修を通して,教師のICT活用指導力を高めておくことが大切である。 # 第5節 外部との連携の構築 ## 1 外部との連携の必要性 総合的な探究の時間では,地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用することが期待されている。とりわけ高等学校の総合的な探究の時間では,地域にある大学等の高等教育機関,各種研究機関や団体,市町村の役場や教育委員会,商工会議所や商工会,非営利団体等との連携が期待されている。それは,総合的な探究の時間では,実社会や実生活の事象や現代社会の課題を取り上げるからである。また,この時間では,多様で幅広い学習活動が行われることも期待されている。それは,生徒一人一人の興味・関心に応じた学習活動を実現しようとするからである。このような学習を実現するためには,教員以外の専門スタッフも参画した「チームとしての学校」の実現を通じて,複雑化・多様化した課題の解決に取り組んだり,時間的・精神的な余裕を確保したりしていくことなどが重要である。そのためにも,外部の協力が欠かせない。具体的には,例えば,以下のような外部人材等との協力が考えられる。 ・保護者や同窓会の人,地域の人々 ・専門家をはじめとした外部の人々 ・小・中学校の地域学校協働活動推進員等のコーディネーター ・社会教育施設や社会教育関係団体等の関係者 ・社会教育主事をはじめとした教育委員会,首長部局等の行政関係者 ・企業や特定非営利活動法人等の関係者 ・小学校や中学校等,幼稚園等の関係者 ・大学等の高等教育機関,各種研究機関や団体等   特に,地域との連携に当たっては,よりよい社会を作るという目的のもと,コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の枠組みの積極的活用や小・中学校の地域学校協働本部との連携を図ることなどにより地域社会と共にある学校を実現することが期待されている。その際,地域の教育資源などを積極的に活用するとともに,育成を目指す資質・能力について共有し,必要な協力を求めることが重要である。このように,地域の素材や地域の学習環境を積極的に活用したり,生徒が地域の一員として地域の人々と共に活動したりすることで,学校と地域との互恵性が生まれ,息長く継続的な外部連携を実現している事例として,次のような取組がある。 ・町づくりや地域活性化につながった活動や取組 ・生徒が地域の伝統や文化を守り,受け継いだ活動や取組 ・生徒が小学校や中学校等の学習支援ボランティアをする活動や取組 ・地域の商店街の再生につながった活動や取組 ・災害に備えた安全な町づくりや防災に関わった活動や取組等 これらの取組は,学校を地域に開くことにもつながり,保護者や地域との信頼関係を築く大きな要因となると共に,学校を核として地域社会も活性化していく「次世代の学校・地域」を創生していくことにもつながる。 ## 2 外部連携のための留意点 外部連携に当たっては,校長や副校長,教頭,総合的な探究の時間コーディネーターの担当者が中心となり,外部人材等と連絡・調整の機会を設定することが考えられる。その上で,一人一人の教師が個別に外部の教育資源を有効に活用することが大切である。また,外部の教育資源を有効に活用するためには,校内に外部連携を効率的・継続的に行うためのシステムが必要である。ここでは,外部連携のためのシステムや外部連携を適切に行うための配慮事項を記す。 ### (1)日常的な関わり 協力的なシステムを構築するためには,日頃から外部人材などと適切に関わろうとす る姿勢をもつことが大切である。例えば,地域活動に学校側から積極的に参画していっ たり,大学や商工会議所,非営利団体等から社会人講師として招いたりするなどの関わ り方が大切である。そのことによって信頼関係が築かれ,互いに協力できる態勢ができ あがる。このことが,外部連携の基盤となっていく。 ### (2)担当者や組織の設置 コミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の活用や小・中学校の地域学校協働活動との連携は,今後一層求められるようになる。外部人材などと連携し,外部の教育資源を適切に活用するためには,校務分掌上に地域連携部などを設置したり,外部と連 携するための窓口となる担当者を置いたりすることなどが必要である。その上で,地域との連絡協議会などの組織を設置することも考えられる。また,学校を支えてくれる地域の有識者との協議の場を設ける必要もある。そのためにも,副校長や教頭,教務主任などが地域連携の中心を担うだけでなく,地域連携の中核を担う教師を校内組織に位置付けることも考えられる。中には,週時程の中に,地元自治体の市長部局や教育委員会,商工会議所や商工会,非営利団体等の外部機関の代表者との連絡会を位置付けて効果を挙げている学校もある。 ### (3)教育資源のリスト 学校外の教育資源を活用することに関しては,これまでに培ってきた地域の教育資源の活用のノウハウを生かして,総合的な探究の時間に協力可能な人材や施設などに関するリストを作成することが考えられる。そのデータを,校内で共有化し,手軽に,日常的に活用できるように整備しておくことも考えられる。こうしたリストを生かして,指 導計画などを作成したり,具体的な学習活動を充実させたりしていくことが大切である。 なお,教育資源の活用に当たっては,教員が全てを直接アクセスする必要はない。例えば,小・中学校の地域学校協働活動の枠組を活用し,コーディネーターとなる地域学校協働活動推進員等の協力を得て,学校が期待したい教育活動に,どのような人材や施設等が活用できるか相談し,調整を依頼することも考えられる。 ### (4)適切な打合せの実施 外部の教育資源を活用して学習活動を行う際には,協力してくれる地域の人々や施設等の置かれている立場や状況などをしっかり把握しておくことが大切である。場合によっては,相手に迷惑を掛けることなども予想される。連携に当たっては,外部人材に対して,適切な対応を心掛けるとともに,授業のねらいを明確にし,教師と連携先との役割分担を事前に確認し,育成を目指す資質・能力について共有するなど,十分な打合せをする必要がある。加えて,外部人材と事後の反省をしたり,外部人材から事の評価を受けたりするなども,その後の学習活動の充実にとって重要である。その際,生徒に関する個人情報の取り扱いについては,十分に注意しなければならない。特に,生徒の実態については,学級や学年全体としての傾向を伝えるなどして,個人が特定されることがないように配慮する必要がある。外部から講師を招く際に,例えば,講話内容を任せきりにしてしまうことで,生徒が自分で学び取る余地がないほど詳細に教えてもらうことになってしまったり,内容が難し過ぎて生徒が理解できなくなってしまったりする場合も見られる。外部講師に依存し過ぎることなく,生徒の学習状況に応じて教師が指導するなど,学習活動を構成する責任者としての役割を果たさなくてはならない。そのためには,外部人材を活用することにより,どのような資質・能力を育成することを期待するのかという点を教師と講師で端的に共有することが大切である。 ### (5)学習成果の発信 外部との連携を一層円滑にするために,学習成果の発信が必要である。学校公開日や学校祭などの開催を通知したり,学校だよりの配布などをしたりして,保護者や地域の人々に総合的な探究の時間の成果を発表する場と機会を設けることが必要である。そのことにより,保護者や地域の人々は,総合的な探究の時間に関心を示すとともに,連携や協力の成果を実感し,満足感をもつことにもなる。また,地域の小・中学生と高校生とで,互いの学習の成果を発表し合うことも考えられる。ここでは,小・中学生が高校生の学習の様子に憧れを抱いたり,高校生は小 ・ 中学生の素朴な質問に驚いたりするなどの効果が生まれることが期待できる。こうした取組は,総合的な探究の時間が生徒の成長につながるだけでなく,相手にとっても大きな成果を生む場合がある。