# 概要
サーマルインターフェイスマテリアル、略してTIM。
CPU( or GPU)のヒートスプレッダとクーラーのベースプレートの間に使う。
マットな質感のヒートスプレッダには表面に微細な凹凸がありそのままクーラーのベースプレートと接触させても熱の移動は間に残る空気によって妨げられてしまう。
そこで空気よりも熱を伝える能力の高い物質を塗布して凹凸を埋めてしまうことで熱の伝わりがよくなり冷却効率が大きく向上する。
TIMは空気に比べたら高い熱伝導性を持っているがそれでも(固体)金属のそれにはかなわないため、なるべく薄くなることも重要である。
主に、
- 一般的なサーマルペースト(グリスとも言う)
- サーマルパッド
- 液体金属
- 相変化材料
がある。
## サーマルペースト
最も普及したTIM。
日本ではCPUグリスや放熱グリスなどと呼ぶのが一般的。
各社から様々な製品が発売されているが性能には大差がないため耐久性と価格が重視される。
中にはパッケージに美少女のイラストが描かれ甘い香りのするものもあり、ファングッズとしての側面もあるのかもしれない…?
宗教要素も強く主に以下の派閥があるとされる:
- Arctic派
- Thermal grizzly派
- えくすとりーむぐりす派
- 清水貴裕派
- どれを使っても変わらないから付属のやつを使え派
| 製品名 | 説明 |
| ------------------------------------------------------------------------- | ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ |
| [Arctic MX-4](https://www.arctic.de/en/MX-4/ACTCP00008B) | 高性能・高耐久・安価の三拍子で昔ながらの定番。2019年頃に偽物が出回った。 |
| Arctic MX-5 | MX-4の後継。欠陥が見つかり販売中止、MX-6に移行。 |
| [Arctic MX-6](https://www.arctic.de/en/MX-6/ACTCP00081A) | MX-4より性能向上。 |
| [Arctic MX-7](https://www.arctic.de/en/MX-7/ACTCP00092A) | 更に性能向上しMX-4から4℃改善。耐久性をうたっているが具体的な年数は言わなくなった。シリンジに残量のわかりやすい窓がついているのも特徴。~~公式はX塗りを推奨。~~ |
| えくすとりーむぐりす | パッケージやシリンジに美少女の絵が描かれているのが特徴。様々なバリエーションあり。色物と思いきや普通に性能も高く「あるてぃめいと」は準最強格。耐久性は未知。 |
| Thermalgrizzly Kryonaut | 「熊グリス」と呼ばれ親しまれている準最強格。定番。 |
| Thermalgrizzly Duronaut | 期待の新人。「薄さ」に注目し専用のヘラで圧力をかけて塗布することで既存製品より5℃程度低い性能を出した。最強格。 |
| Thermalright TF-7 | 大した性能はない。 |
| Thermalright TF-8 | 固くて塗りにくいとの評価。 |
| 親和産業 シミオシ OC Master SMZ-01R | 「猫グリス」と呼ばれ親しまれている。 |
| [Kooling Monster KOLD-01](https://koolingmonster.com/thermalpastekold-01) | 個人で手に入るグリスでは最強格。耐久性も5年以上をうたう。 |
### 塗り方
これをヒートスプレッダやダイの上にどう塗り拡げるかにはいくつかの方法がある。
~~結論から言えば*Penta dot*と呼ばれる、5つの点をヒートスプレッダやGPUダイの上に作って上からクーラーを乗せてその圧力で押し広げる方法が最良だった。~~
塗り方によって寿命が大きく変わることがigor氏による加速劣化実験で示された。
[Thermal paste in practical and durability testing: consistency and quantity determine durability or failure!](https://www.igorslab.de/en/using-thermal-paste-correctly-how-consistency-and-quantity-determine-shelf-life-or-failure-practical-test/)
**ヘラ等を使い、ちゃんと全面に厚く塗ることで耐久性を高められる。**
更に縁の部分が少し盛り上がる独特の塗り方をすることによって10000サイクル経過でも劣化しないという結果が得られている。
一方で、**点や線状に置いて圧力で伸ばす方法では最初は良くても長期使用で乾きやすくなってしまう。**
ただ一応その中でもPenta dotは最もマシではあった。[^2]
[^2]: https://www.igorslab.de/en/laboratory-test-how-the-application-method-affects-the-life-span-of-thermal-paste-with-videos/4/
### 関連
- [Beste Wärmeleitpaste, Datenbank und Charts - Paste versus Paste, Tests und Haltbarkeit für CPU und GPU | igor´sLAB](https://www.igorslab.de/die-weltweit-erste-interaktive-waermeleitpasten-datenbank-echte-messdaten-materialanalyse-und-objektiver-faktencheck/)
- [<i class="fa fa-youtube"></i> 仁義なきグリス戦争 CPUグリスの本当の性能ご存じですか? SMZ-01R MX-4 MX-6 えくすとりーむぐりす えくすとりーむぐりすあるてぃめいと FUZEicePlus 自作PC](https://www.youtube.com/watch?v=Tu6uo8OSQ-g)
## 液体金属
その正体はガリウム・スズ・インジウムの合金であるガリンスタン。
圧倒的に優れた熱伝導性と粘性の低さにより飛び抜けた性能を誇るが、導電性やアルミニウムへの腐食性があるためリスクがある。
そのため価格の高さもあり一部のエンスージアストやオーバークロッカーに使われていただけだった。
アルミニウムなどの金属に触れると脆化してしまうため注意。
表面が以下の金属であれば安全とされる:
- クロム
- 銅
- ※表面に原子1個分の合金が生成される。見た目以外への影響はない。研磨することで取り除ける。
Intelから第3世代Core iシリーズ(コードネーム: IvyBridge)のCPUが発売されたのだが、ダイとヒートスプレッダの間を埋める材料がソルダリングからグリスになったことで冷却性能が低下するという問題が出た。
その時にヒートスプレッダを外してグリスを液体金属に塗り替えて戻す「殻割り」「液体金属化」と呼ばれる作業が流行ったことである程度は一般的になった。
最近では「LT-100」を筆頭に安価な液体金属が販売されるようになり敷居は下がったかも。
実はガリンスタンの原価は安く、自作すれば激安で得られるため驚くことではない。
[<i class="fa fa-youtube"></i> 実は激安で自作が可能な液体金属!~PC用熱伝導体としてガリンスタンを作ってみる~](https://www.youtube.com/watch?v=dOOTCXEnJDw)
| 製品名 | 説明 | 入手先 |
| --------------------------- | ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------- | ---------- |
| LT-100 | これまで高級だった液体金属を安価にした存在。シリンジに注射針がついてないなどコストカットが見られるが性能は最強。 | AliExpress |
| Thermal grizzly Conductonaut | 通称「熊メタル」。 | Amazon |
| Thermalright SILVER KING | 通称「シルキン」。 | Amazon |
2025年頃からHoneywell PTM7950という相変化サーマルパッドが流行りだしこちらが好まれるように。
### 塗り方
事前に周囲の表面実装部品などがある場合はポリイミドテープ(カプトンテープ)の貼り付けやその他の方法で絶縁しておく。

製品に付属するブラシないし綿棒のようなもの等を使ってダイやヒートスプレッダの全面が濡れるように広げていく。
またクーラーのベースプレート側にも同様に塗る必要がある。


濡れてさえいれば良く、厚みはなるべく薄く、つまり最小の量を使用するように心がける必要がある。
多いと後にあふれて流れ出てショートする原因となるだけだ。
## 相変化材料
相変化素材でできたサーマルパッド。
サーマルペーストとは異なりバインダーに純粋なシリコーンではなくパラフィンやワセリンなども配合して絶妙な温度で溶けるようにしている^[要出典]^。
Honeywell PTM7950の登場、そして[<i class="fa fa-youtube"></i> LTTの紹介動画](https://www.youtube.com/watch?v=2BhKx0iQ4K8)により普及した。
液体金属に近い熱インピーダンスを誇りながら非導電性でどこでも飛び散ったり酸化したりしない。
またアルミニウムや銅にも影響を及ぼさず、グリスの代わりに安全に使える。
常温では固体だが45℃以上では液体になる。
これにより流動性を得ることによりポンプアウト(余分な分が外側に押し出されてなくなること)して層が薄くなり、また微細な隙間に入り込んで熱伝導を高める。
Honeywellは65℃以上にすることを繰り返す「バーンイン」を推奨しており、これをすることによって性能が高まっていく。
つまり使うほどになじんで性能が向上する。
従来のサーマルペーストには時間の経過とともに性能が落ちていく粗悪なものもあるが、これはむしろ1年経過で温度が1℃低下したなどの報告があり経年劣化に強いと考えられている。
ただし熱密度が高すぎる状況では液体金属に差をつけられるとされ、Zen2~Zen5などのCPUでのダイレクトダイでは工場出荷時のソルダリングよりはマシなものの液体金属にはおよばない。
Raptor LakeやGPUなど熱密度が低いものであれば問題ない。[^1]
[^1]: https://www.overclock.net/threads/ptm7950-or-liquid-metal-on-direct-die.1811663/
以下の表はレビューを元に予想した性能順とする。
偽物も多いと聞くので注意が必要(リンク先は未確認)。
| 製品 | 説明 | 入手先 |
| ------------------------------------------ |:---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------:| ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------ |
| Honeywell PTM7950 | 原点にして頂点 | [MODDIY](https://www.moddiy.com/products/Honeywell-PTM7950-SP-Super-Highly-Thermally-Conductive-PCM-Pad.html) [LTT Store](https://global.lttstore.com/products/ptm7950-phase-change-thermal-pad) |
| 親和産業 PERIHELION PHASE CHANGE MATERIAL | PTM7950のOEM。 | [Amazon](https://www.amazon.co.jp/dp/B0GN7YFR3R/) |
| Honeywell PTM7950-SP | ステンシルプリント版。塗布後15時間の乾燥が必要。 | [Amazon](https://amzn.asia/d/5xI9Lq3) [MODDIY](https://www.moddiy.com/products/Honeywell-PTM7950-SP-Super-Highly-Thermally-Conductive-PCM-Paste.html) |
| Honeywell PTM7958-SP | OEM版?性能は同じか少し劣る? | [MODDIY](https://www.moddiy.com/products/Honeywell-PTM7958-SP-Super-Highly-Thermally-Conductive-PCM-Paste.html) |
| Thermalright Heilos V2 | PCM8500以上PTM7950未満。本家に肉薄する性能ながらかなり安い。 | AliExpress |
| PCM8500 | AliExpressやAmazonなどでHoneywell PTM7950として騙し売られているものの正体とされている。本物に及ばないがそれほど悪くもない。 | |
| えくすとりーむし~と | PCM8500のOEM。 | [オリオスペック](https://www.oliospec.com/shopdetail/000000015964/183/page1/order/) |
| Thermalgrizzly PTM | 本家のOEMだとも言われているが、比較では劣った性能であったという報告しか見つからなかった。 | Amazon |
| Thermalright Heilos | 性能悪い。 | Amazon |
| PCM5000 | 最弱。 | |
| 信越化学工業 PCS-CR-10 | ? | [モノタロウ](https://www.monotaro.com/p/2479/5987/) |
### 使用方法
1. 新品のメスを使ってダイ・ヒートスプレッダと同じサイズに切るか、ハサミを使い少し大きめに切る。
- ハサミはせん断面に異物が残る場合がある。せん断面がクーラーと挟み込まれる位置に存在していると、そこにある異物を挟み込んでしまい層が厚くなって熱インピーダンスが増加するなどの影響があるかもしれない。
- <i class="fa fa-warning"></i> ダイ・ヒートスプレッダより小さいサイズにカットしてはならない。[グリスの塗り方の項](#塗り方)で説明した通り、信頼性が低下したり寿命が短くなってしまう。
2. 片側のフィルムを剥がし、ダイ・ヒートスプレッダに乗っける。
- (クーラー側でも構わない。どちらかやりやすい方に。)
3. 指で軽く全体を押してしっかりとくっつかせる。
4. ピンセットなどでもう一方のフィルムを剥がす。
- <i class="fa fa-warning"></i> 真上に持ち上げるように剥がそうとするとフィルム側にくっついてきてしまうおそれが高まる。
5. クーラーを取り付ける。
#### 他所に書かれていたアドバイスたち
これがPTMシートの貼り方です。興味のある方はどうぞ。
1. 使用前にPCM(相変化材料)を冷蔵庫で30分ほど冷やします(冷凍庫を使う場合は10分程度にしてください)。こうすることで少し固くなり、扱いやすくなります。
2. シートをダイのサイズより少し小さめにカットします。たとえば20x25mmのダイなら、約18x23mmくらいに切ります。シートは溶けると端まで広がるためです。
3. プラスチックの片側の保護シートを剥がし、PCMをダイの中央に貼り付けます。
4. PCMをしっかりとダイに密着させるように押し付けます。かなり強く押しても大丈夫です。
5. ピンセットや薄い道具/ナイフなどを使って、自分側に向いているプラスチックの保護シートを鋭く引っ張って剥がします。持ち上げるのではなく、後ろに剥がすイメージです(シートを小さく切った方がここで扱いやすいです)。
6. クーラーを取り付けます。サーマルパッドが適切な厚さになっていること、全てのネジがしっかり締まっていることを確認してください。
7. PTMをサーマルサイクルします。ダイにストレステストをかけて、デバイスが十分に熱くなるまで(10分ほど。大型クーラーの場合は30分かかるかも)加熱します。GPUやCPUならFurmarkが利用できます。テスト後、デバイスを冷まして電源を切り、完全に冷えるまで待ちます。この手順をもう一度繰り返します(必須ではありませんが、繰り返すことで接触部分が薄く広がりやすくなります)。実際、私のノートPCではこのサーマルサイクル後、アイドル時の温度が53℃から47℃まで下がりました(約1週間後)。
これが手順です。少し手間ですが、この素材は極めてポンプアウト現象に強いため、耐久性は数十年単位です(これがノートPCで数ヶ月で再塗布後にオーバーヒートし始める理由です)。この素材さえあれば液体金属などを使う理由はありません。値段は高めですが、その価値はあります。もしHoneywell製が高いと感じたら、LairdのTPCM 7250(0.25mmタイプ)も使えます。220x220mmのシートでおよそ35ドルほどです(今は45ドルくらいかも)。
https://www.youtube.com/watch?v=ZeVlC9WZqcw のコメントより。
#### バーンインの落とし穴
注意点として、バーンインはCPU(GPU)温度ではなく相変化材料全体が65℃以上になる必要がある。
例えば高い冷却能力を持つ水冷クーラーなどではポンプヘッドのベースプレートが65℃以上にならない可能性が高い。
なのでファン回転数やポンプ速度を操作して意図的に高温にする必要がある。
負荷をかけるよりも ポンプ速度 or ファン速度 を上げ下げしてバーンインを繰り返すほうが確実かつ省エネ?
(アイドル温度が60℃台であるノートPCの方がいい結果を聞くのはこのためだろうか?)
#### Tips
> PTM7950で良好なパフォーマンスを得る鍵は、ボンドラインを可能な限り薄くすることです。
> IHS上では、特に水冷システムでは、IHS/コールドプレートの表面温度がシリコン内部の温度よりも大幅に低い(高負荷時には約50℃の差が出る可能性がある)ため、ボンドラインを薄くするのは困難です。
> Honeywellは「バーンイン」に65℃を推奨しています。温度が上がるほど粘度が低下し、最小ボンドライン厚への到達が早くなります。
> 私のやり方は、ファンをオフにし、負荷を軽くした状態で水温を約50℃まで上げ、しばらく放置することです。カスタムループの場合は、加圧されないようにリザーバーキャップを開けてください。分解の様子から、片側だけが薄くなり、層の大部分はまだ比較的厚いことがわかります。
> 水を十分に温めれば、PTMはKryosheetと同等かそれ以上になるはずです。
> 私は Red Devil 7900 XTX に PTM7950 を取り付けました。PTM を使用すると、高温の状態で稼働させるほど性能が向上する傾向があることが分かりました。GPU ダイの温度とホット スポットの温度の差は、最初は約 19 ~ 21 度ですが、ゲームを 1 ~ 2 時間行うと、約 14 ~ 16 度まで低下します。7900 XTX のダイにはダイ内に低下部分があるため、この TPM がゆっくりとその低下部分を埋めることで、7900 XTX の温度が Kingpin のサーマル ペーストに比べて約 9 ~ 12 度低下し> ました。そのため、ゲーム セッションが長ければ長いほど性能が向上することに気付くでしょう。
> @sldkjh ええ、溶剤を再度加えるのはどうかと思います。それから、PTM7950のステンシルプリント(SP)版と同じように、25℃で15時間硬化させてください。濡れた状態で塗布してすぐにマウントすると、6時間しっかりバーンインしたにもかかわらず、温度が約1.3℃悪化しました。クーラーを取り外した時もまだ濡れていました。私の意見では、相変化には理想的ではありません。重ねて溶かしたり、ただ重ねて置くだけでいいんです。かなり許容範囲が広い材料です。
https://www.youtube.com/watch?v=YLFh8TGQGd4 のコメントより
### 関連リンク
- [【比較】CPUグリス&相変化シートレビュー|PTM7950・Heilos V2・SMZ-01R・FUZEIce Plus](https://nigolog.com/pc/ptm7950/)
- [Roundup with 5 phase change pads: Honeywell PTM7950, PTM7950SP, OEM PCM5000, PCM8500 and Thermalright Heilos Review](https://www.igorslab.de/en/5-phasenwechsel-pads-im-test-honeywell-ptm7950-ptm7950sp-vs-pcm5000-pcm8500-und-thermalright-heilos/)
- [Avoid mistakes: How to use pads like the Honeywell PTM7950 or other phase change pads correctly! | Instructions and practice](https://www.igorslab.de/en/how-to-avoid-mistakes-how-to-use-pads-like-the-honeywell-ptm7950-or-other-phase-change-pads-correctly-instructions-and-practice/)
- [<i class="fa fa-youtube"></i> I Removed The Liquid Metal Thermal Paste To install PTM7950, And The Results Surprised Me!](https://www.youtube.com/watch?v=O5hx89UN71Q)
- 実際に貼り付けている様子がわかる。