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# Philippe Soupault, Chansons (1949)
## フィリップ・スーポー『シャンソン』について
### スーポーについて
- 1897年8月2日、シャヴィルで生まれる。1990年3月12日、パリで没。
- アラゴン、ブルトンとともに「三銃士」と呼ばれる。『アクアリウム』(1917)、ブルトンとの共作『磁場』(1919)。1926年、共産党とグループの接近をスーポーが嫌った結果、**シュルレアリスムから除名**。
- 30年代以降、ジャーナリズム活動の一環として米国、ソ連、ドイツ等を訪問。第二次大戦中はレジスタンス活動も。
- 戦中から戦後(40〜60年代)にかけては、ラジオに関する仕事も多い。**57年8月から58年10月まで、童歌 comptine について放送**。フランスだけでなく、カナダ、スイス、ベルギーの人々ともコンタクトを取りつつ各地の詩の収集につとめる。77年までラジオの仕事を続ける。
- 晩年は『忘却の回想録』 _Mémoires de l'Oubli_ の執筆に務める。
- スーポーは幅広い交流で知られている。アポリネール、ルヴェルディ、サンドラール等の詩人たち、アラゴン、ブルトンらシュルレアリストの他、カレル・タイゲ(プラハ)やエドモン・ジャベス(カイロ)といった外国の詩人とも交流があった。
### 『シャンソン』について
- 『シャンソン』は、Eynard社(Rolle)より、1949年11月に出版。アンドレ・マッソンによる著者デッサン付き。**中後期の作品にあたる**。
- 『シャンソン』は、何度か再版されている;『詩篇と詩』_Poèmes et Poésies_, Grasset, 1973 ; 『友だち、子供たちのための詩』_Poésies pour mes amis les enfants_, Lachenal & Ritter, 1983 ; 『ジョージア、エピタフ、シャンソン』_Georgia Épitaphes Chansons_, Gallimard 1984.
- 『シャンソン』は5つのパート(+ 前書き) に分けられる。
1. 『初期詩篇』_Premières Chansons_
2. 『ノスリと森の歌』_Chansons des Buses et des Rois_ [^1]
3. 『秘密の武器』_L'Arme secrète_
4. 『昼と夜の歌』_Chansons du Jour et de la Nuit_
5. 『体験された歌』_Chansons vécues_
- 1と2は『ジョージア』_Georgia_ (1926) 『シャンソン』_Chansons_ (1937, 全集に収録) に収められた詩篇の再編。3と4はそれぞれ1946年、1949年の詩集の完全再版。
- 今回読む « Mais vrai », « C'est vrai », « Brouillard et Cie », « Grammaire » は『秘密の武器』からの再録。
- 同時代的な作品として、デスノス『おはなしうた』 Desnos, _Chantefables_ (1944)、プレヴェール『言葉たち』, Prévert, _Paroles_ (1946) [^3] などがある。
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### 話し合いたい点
- 「シャンソン(歌)」と詩の関係。
- 詩的叙情性 le lyrisme poétique に対立する「シャンソン」という選択について(cf. Marie-Paule Berranger, Fêtes de l’impatience . Les chansons de Philippe Soupault », 1993 ; MyriaM Mallart, « Les chansons de Philippe Soupault: forme poétique ou mode d’écriture ? », 2009)
- 叙情性と文学、叙情性と技巧、叙情性と子どもの関係性について
- un "nouveau lyrisme" (la nécessité d'une référence au monde et à la subjectivité dans le texte) et "antilyrisme" (retour à la littérature (pure), refus de l'usage figural et du rythme)(Rodriguez, p.7.)
## 試訳
### 本当のこと
彼の人生は長く苦しい試練でその死はロマンティックだった
彼の母はトロンボーンで彼の子は喘息だった
一番ばかげていない仕事が一番いいわけじゃない
みんな彼を知っていたし彼は金属でできていた
彼のお気に入りの娘は〈憂鬱〉という名前だった
仕立て屋にこびへつらっていたある西欧風の名前が
批判というわけではなくシラミのように飢えていて
指を噛み店全体を燃やした
それが少なくとも彼の友のへぼ詩人たちがはっきり言うことだ
この話はアメリカからやって来て
別のどこかからから来たのかもしれない
### そうだね
七匹の子牛
これは少ない
七つの卵
これじゃ多い
1892
これは乾いている
1897[^2]
これじゃゆき過ぎだ
りんごと梨と小型時計
感動する
綿繻子に勝るものはない
わかりきったこと
僕を止めようとしないで
もう決まったんだ
月と雷雨と梨の木
月だ
### 株式会社 霧
時間は流れる 血が流れるように
そして僕は行く 時が過ぎるように
自分の心臓を抱え 日々が膨らませ重くする
この重い荷物を抱えて
僕は生きたかったんだ
失われた日々や 夢見られた夢をよみがえらせつつ
黄昏は待たない
押しつけられ受け取られ否定された
苦痛が消えてなくなるのを。
時は過ぎまた過ぎゆく
悔恨の列を引き連れて
その反復 かすかな光 反響
時は同じ道を行く
時に会いに行かなくては
向かい風の道の上
何よりもう待ってはいけない
煙が消えるのを
時間 夜 年月
骨より白いすべてのものが消えるのを
### 文法
〈おそらく〉 〈いつでもおそらく〉
副詞よ 呼びかけ[^4]が花開くとき
〈ほとんど〉とか〈ほとんどない〉と言って
お前たちはなんと私を退屈させることか
句読点よ お前たちなのか
接続法たちの泳ぐ
いけすにひしめくのは[^5]
お前たちを梱包し紐でくくってやる
段落に呪いあれ
予言が実現するために
恥さらしな私生児の文法家と
統語法のへたくそな遊戯者よ
お前たちの命令法をしゃぶれ
そして僕たちを眠らせてくれ
これっきりだから
夜で
猛暑なんだ
[^1]: この詩集のタイトルは『文学』誌 _Littérature_ の第19号に掲載された『目的と王の歌』_Chansons des Buts et des Rois_ (1921) の語音転換。そしてそもそもこの作品が、ユゴー『街と森の歌』_Les Chansons des rues et des bois_ (1865) から言葉遊びのでもある。
[^2]: スーポーの生まれた年は1897年である。
[^3]: 『シャンソン』には、プレヴェールの「フランス・パリにおける頭の晩餐会を描写する試み」 (http://dormirajamais.org/tentative/)をおそらく意識したであろう 「幼馴染」という詩が収められている。<br />
« Amis d'enfance »
Ceux qui vous disent bonjour
Ceux qui vous saluent simplement
Ceux qui vous font couac en passant
Ceux qui disent toujours amen
Ceux qui vous donnent signe de vie
Ceux qui vous disent merde
Ceux enfin qui ne vous disent rien
Ce sont peut-être les plus dévoués
[^4]: « apostrophe » は頓呼法(人物・事物に呼びかける技法)のことかもしれない。あるいはアポストロフ(省略記号)という可能性もある。
[^5]: 接続法が使われることと句読点の関係はなにか。