[みす老人会 2nd Advent Calendar 2022](https://adventar.org/calendars/7865)の23日目 ### 2022/12/3 今日は美容院に行ってきました。髪を切る間にお茶を出してくださるのですが、届いたホットティーはアツアツ、手をつけられませんでした。美容師さんの勧めで有り難く持ち帰らせていただきました。しかし残念ながら駅に着く頃にはすっかり、冷え冷えホットティーです。 ふと、冬が来たんだ、12月なんだ、と思いました。 12月といえば**クリスマス**ですね。到着した池袋駅もカップル割り増しに見えます。その風景で、ある予感が頭をよぎりました。 そんなこと起こるわけなかろう。 現に最近は遭遇していませんでしたし、予感は無視して夕飯を調達します。帰る間に冷めてもいいように、家で温めるものがいいかもしれません。ちょうどTOBU閉店間際に安くなっていた親子丼を見つけました。最後の1つだった親子丼を手に、JR改札口へ向かいます。 その時、前方15mにいたのです。 知り合いではなく、全くの他人です。ただし、他の人々とは違いました。 その男性は、女性と話していましたが、すぐに女性に置いて行かれてしまいました。 さらに直後、別の女性に話しかけに行き、再び置いて行かれていました。 予感は的中だったのです。 ……**ナンパ**を嗜む方ですか? 遭わずに帰りたいところですが、前方に改札、途中にナンパ男性。仕方なく人の影に隠れつつ通り過ぎます。幸い、彼の背後を通り抜けることとなったようです。 目を伏せて歩いたせいで改札を通り過ぎているかなと、天井の改札案内を探した時でした。 右脇から人の顔がにゅっと出てきました。 上を向いた視界にバッチリ入っていますし目も合っています。…誰でしょう? 「どうも」 男性は言いました。ジャケットから察するに、先ほど**2連続で**ナンパに**失敗**していた男性です。 「はあ、どうも」 それ以上にかける言葉もありません。強いて挙げるなら、声をかけるときは右側からと決めてるんですね、でしょうか。 「あったかそうなもの飲んでるね、なあに、それ?」 「お茶です」 たしか焙じ茶をいただきました。もう冷え冷えですし口つけてませんが。 「へえ〜、やっぱこの季節はあったかい飲み物じゃないと不味いよねー」 「……」 不味くなってしまったのでしょうか、私の焙じ茶。 改札に向かって、PASMOを出しつつ歩きます。ジャケット茶髪男性は未だ話し続けようとしています。 「あー。あの、そのさあ」 話し続けようとするだけでネタは無いようです。 「その、なに、持ってるテイクアウト?それ、カレー?」 「親子丼です。」 ポップアップショップで隠れていた改札が見えてきました。ここでようやく、ジャケット茶髪歳上男性の話は**サビ**に入ったようです。 「いや俺さあ友達と飲んでたんだけど友達先帰っちゃって。1人で帰るのも寂しいからさあ」 「私は帰りますね」 「親子丼もさあ1人より誰かと食べた方が美味しいじゃん?だから…えー」 言い淀みました。サビ入りに失敗したようです。テイクアウトの親子丼をダシに見切り発車してしまって、さて、どう話をつなげるのでしょうか。 「あー、俺もその親子丼買うからさあ…」 「あははははは!」 すみません、面白くて笑ってしまいました。あなたと親子丼食べると美味しくなるとは……。 「親子丼、売り切れでしたよ」 と私は到着した改札に入りました。 背後からは「売り切れてたか……」という声だけが聞こえました。 <br> <br> # 私が出会った 私の知らない人 53代のろろです。私が何者かは些末な問題でしょう。赤の他人のお話をしますから。 私は外出時に突然声をかけられる頻度が1,2ヶ月に1回と、ちょっぴり多めです。話しかけてくる人々は老若男女問わず、さまざまな方々がいらっしゃいました。大学入学とともに上京してから出会った印象深い方々のお話をします。随分前のことは曖昧ですがご容赦ください。 --- ### 2018/5 -邂逅- 初夏の晴天の下、私は土曜1限の体育に向かっていました。体育の後すぐ帰宅のつもりで、半袖短パンのジャージで通学です。 前方から人が歩いてきました。そしてすれ違わずに言われた言葉が衝撃的でした。 **「足、撮らせてもらえませんか?」** 「え?」 「え?」 何故相手も驚いているのでしょう?断られると思っていなかったかのような反応です。私は足早に授業に向かいました。 初の「声かけられ事案」ではありませんでしたが、上京したての私には強烈で、東京って怖いなと思いました。 --- ### 2019/1 -人選ミス- 怖いのは東京ではなく、5月に出会った人だったのだと気づいた頃です。よく道を訊かれ、声をかけられることに慣れてきました。 その時の私はオレンジに染めた髪、パーカーにキャップ、ヘッドホンを装備し、乗り換える電車に迷ってホームの電光掲示板とスマホを見比べていました。 すると突然、外国人観光客の方が話しかけてきたのです。彼らも乗り換えに迷ったようです。 電光掲示板やスマホと睨めっこしている人に道を訊くものではないと思います。服装を鑑みても、より適切な人は私の他にいなかったのでしょうか。 ちなみに私は**方向音痴**です。結局Googleさんに聞きました。 --- ### 2019/8 -学説- サークル後、最寄り駅からの帰路は飲み屋街が近く、金曜だけあって人がたくさんいました。 声をかけてきたのは茶髪の三十路男性です。色々と私の容姿に言及していましたが、要約:金曜で飲み足りないから一緒に飲もうよ、でした。俺んち近いんだよね、とかなんとか。 私は未成年でしたし、もちろん断って帰宅しようとします。 「そんなこと言わずにさあ」 **腕を掴まれました。** ?????? 私が歩こうとしても、がっしりと掴まれたままです。 ……解放されました。 さすがに周りの人の視線は気にするのでしょうか。 茶髪・チャラ男**風**・25〜40歳くらいの男性のナンパは距離感が近い傾向にあるという仮説を得ました。 --- ### 2020/? -パイン鑑定士- 近所のスーパーの果物売り場にカットフルーツがたくさん並べられていることがあります。1パック120円ほどで買えるカットパインは私もよく買っていました。糖度~%!や10%off!と貼ってあるものはシールに違わず大変美味しくてお得な気がします。買い出し中、デザートに買おうかとパックの大小で悩んでいた時でした。 「このパイナップルどこ産?」 70歳くらいでしょうか、お爺さんが話しかけてきました。パックを見る限りフィリピン産です。 「やっぱパイナップルはさあ、フィリピン産が美味いんだよな」 そうなんですね、と私は返します。食べる時に産地を意識していませんでした。お爺さんはオススメの産地についてパックを眺めつつ話しています。スーパーのカットパインについて、こんなにお話を伺ったのは初めてで、視野が開けた心持ちでした。 5分ほど話した後、お爺さんは去りました。パイナップルは購入なさいませんでした。 東京のど真ん中のパイナップル農家の方だったのでしょうか、真相はわかりません。 --- ### 2020/2 -現実とリンク- 約束より1時間も早く待ち合わせの新宿に着いてしまいました。方向音痴の保険として早く出発した結果、そのまま早く到着してしまうことがあります。理由なく新宿のマルイあたりの交差点を彷徨くことにしました。 横断歩道を渡った先で、おばちゃんに声をかけられました。 「あのね、マルイがこの辺にあるって聞いたんだけどね」 スマホをお待ちでしたが、調べ方が分からずに道を尋ねてくるおばちゃんはよくいらっしゃいます。丁度私はマルイ方面から来たので案内できそうですが、他の「マルイ」に御用かもしれません。 「ちょっと待ってくださいね」 念の為にGoogleさんにお伺いしようとスマホを出して、おばちゃんに近寄りました。 おばちゃんもスマホを見ています。Google Mapの起動だけしたのかなと横目で見ると、そこに**野生のポッポ**が飛び出してきた! ボールがクルクルと回されてポッポへ飛んでいきます。**GREAT!** ポケストップをクルクルと回して道具を手に入れます。 おばちゃん、ポケモンGOってね、現実の地形を使っててね…… 「マルイ、ご案内しますね」 「あら、わるいわね〜」 マルイまでの道中、歩く時以外はポケモンを捕まえていました。その調子でGoogle Mapも使いこなしてね、おばちゃん。 --- ### 2021/5 -祖父?- ゼミの勉強に就活の面接続きだった私は、束の間の休日にお酒を買いに池袋へ出ていました。お目当てはミード(蜂蜜酒)、酒屋さん巡りです。東口側にある綺麗な大きめの酒屋さんで目的のミードを見つけ、ニコニコで退店したところでした。 60歳くらいのおじいちゃんがいました。 「ちょっと、ちょっと」 「はい?なんでしょう」 **「一緒にさ、酒呑もう」** …なぜ? 真っ昼間からお酒呑む相手を探していたのでしょうか。 丁寧にお断りすると、本当に心底ガッカリした顔をしていなくなりました。 そんな孫みたいに扱われましても……。 --- ### 2021/8 -老若男女の若枠- 大学4年になり、就職前に自動車免許を取ることにしました。試験に合格し、免許証を手に歩いていると 「こんにちは!」 声がしたのは右下です。 そこには小学生がいました。多分この子が挨拶してくれたのでしょう。こっちを見ています。 「こんにちは」 「あのね」 本格的に会話するようです。伺いましょう。 「これからね、プール行くの!」 その子はプールキャップとゴーグルを既に身につけていて、完全に **"水泳教室に行く小学生"** の風貌でした。 「学校の?それとも習い事?」 「えっとね、スクールにね、週3回行ってるの」 小学校をスクールと呼んだわけではないと思います。 「そっか〜、習い事、偉いね」 「うん、最近始めたんだよ。今日もね、たくさん泳ぐの」 ウキウキでお話ししてくれます。きっと水泳教室が楽しいのでしょうね。 「じゃあ、今日も頑張ってね」 「うん、頑張る!」 そこで私の行く道と小学生の道が分かれました。 「じゃあね、ばいばい!」 「バイバイ〜」 元気に手を振ってお別れしました。 知らない人に話しかけたら危ない人かもしれないよ、と伝えたくなりましたが、今それに言及するのは不粋でしょう。 急な出来事で何してたのか忘れましたが、取り敢えず元気に帰宅しました。 --- ### 2021/9 -違いがわかる- 家庭教師のバイトで生徒の家に向かっていた時でした。 「あの、お姉さん」 1,2ヶ月前に距離感近めナンパ(普通のTシャツだが25,6の茶髪さん)に遭って仮説を強化していた場所だったので、またか、と思いました。 声のした方を見ると、大学生らしい眼鏡の男性でした。 「よかったら、お茶しませんか?」 「今急いでるので」 「そうですか」 ……あっけなく行ってしまいました。何かパンフレットを持っていたので、ナンパというより宗教勧誘か何かだろうと思います。やはりチャラ男**風**じゃないときは鬱陶しくない(仲良くお茶が目的ではない)のかもしれません。 ナンパの個々の違いって**論文**として成立するのでしょうか? --- ### 2021/10 -罰を受けたのは- その日も池袋へお出かけしていました。 「お姉さん、めっちゃタイプです」 どこから声がしたのかも分からないくらい突然でした。相手が大学生だと分かった時には、もう大学生は私の後方へ立ち去るところでした。呆気に取られたまま、その背中を視線で追うと、どうやらお仲間がいらっしゃったようです。お仲間みんなでこちらを一瞥した後、声をかけた**勇者**と話し出しました。 なるほど、世にはこういった形態の罰ゲームもあるのですね。 実にタチが悪いですが、このような遊びが実在することが微笑ましくすらあります。 しかし、**どうして私なのか?** が気になり始めました。くじ引き運が悪いのか、はたまた平均的なのでしょうか。 首を傾げつつ、そそくさと立ち去る私でした。 --- ### 2021/12/26 -強くなったな- クリスマスが終わった池袋駅でのこと、JRの改札口近くで声をかけられました。例によって**チャラ男になれなかった感じ**の26,7歳くらいの方です。 2ヶ月前の同じ雰囲気の方には「大学に行く」という理由でやっと納得していただきました。チャラ男っぽい方々は距離の詰め方からして縮地法の使い手です。 流石の私も煩わしさに慣れてきました。 今回も研究室に逃げるか、とJRあたりから副都心線方面へ歩きます。この道は長いです。 当然、話しかけられます。 「今日さあ、寒いよね〜」 「12月ですからね」 もう年末、そりゃ寒いでしょう。 「昨日はクリスマスだったけど、どう過ごしたの?」 「特に何も…」 何をした覚えもありません。実際何してたのでしょう、ゼミの勉強? 「せっかくだしさあ、カフェかなんかであったかいもの飲まない?」 どのあたりがせっかくなのでしょうか。 「クリスマスに何もないままよりはさあ」 「クリスマス過ぎてますよ」 昨日はクリスマスですが、クリスマスって12/25を過ぎた瞬間に季節遅れの行事になりますよね。 「いや**逆に**さ、クリスマスの後に初対面でお茶するの、面白くない?」 「面白くないですね」 **何の逆なのでしょう…?** 「面白い⇒クリスマス後∧初対面∧お茶」の逆ってことですかね。 あなた∈初対面なので、偽。 大学に行くのでと言っても折れません。 「たまにはさ、息抜きだって必要だよ、勉強なんて今日じゃなくていいじゃん」 途端に勉強したくなってきました。 ようやく副都心線改札に着き、私はすぐに改札内へ逃げ込みます。改札の外からこちらを見ていましたが、入ってくることはありませんでした。 道端で拾ってカフェに誘えど、一駅分のお金すら払う気無いのですよね。安く見られたものです。 ナンパに対して根拠のない強気な感情が生まれました。 --- ### 2022/6 -逃した機会- 就職後は舐められてナンパなど無くなるでしょうと思い始めた頃、仕事終わりに美容院のため池袋にいました。 早めに到着すると、改札前には特設の肝油売り場ができていて、私は肝油の缶に吸い寄せられていきました。幼稚園ぶりに食べたいです。 肝油だけを見ていたら、目の前を横切ろうとした方に気が付きませんでした。申し訳なくなり、少しペコリとします。 しかし一向に通り過ぎようとしません。早く肝油を見たいので退いていただきたいですね。 その30歳くらいの男性はスーツに眼鏡、にこやかな笑顔、できる営業マンのような風態でした。第一印象として、**パパ活のパパ**と聞いたら腑に落ちます。 「どうも、こんばんは」 これは挨拶ですね。 こんばんは、と返します。 「僕さ、19:00まで暇な人なんだけどね」 これは自己紹介ですね。ただいま18:15、確かに持て余す時間です。 「お姉さんは、暇?」 「いえ、18:30から用があります」 美容院の予約は18:30にしました。 「時間かかる感じかな」 こういう方が会社にいるところは想像に容易いです。会社の上司が**業後にナンパ**してたら少し引きますが。 「その後は?」 その後?あれ、暇なのは**19:00まで**なのではなかったでしょうか…? 「いえ、帰ります」 明日も仕事です。 「あちゃー、そっかー。わかった、ありがとね」 笑顔も爽やかにその男性は去っていきました。お礼を言う人初めて見ました。 正直申し上げて、次の日お休みだったら誘いに乗ってお茶したと思います。直接お伺いしたかったのです、声をかける相手の選抜基準を。 --- ### 2022/6 -妖怪 赤カッパ- 仕事が終わり、最寄り駅からの帰り道は傘は要らない程度の小雨でした。近所は坂が多いせいか、よく自転車が通ります。目の前から自転車がやってきました。合羽を着ています。**真っ赤な雨合羽**です。 「あー!どうも!」 通り過ぎる瞬間、何故か手を振られました。つられて振り返します。気づかなかっただけで会社の同期かもしれません。あれは知り合いに対する態度です。 しかし、あんなに赤いカッパの知り合いに覚えがありません。自転車の音も、シャーッと後ろの方へ遠くなっていきます。すれ違いざまに人違いされたのでしょう。気にせず家へ歩き出します。 **シャーッ** 妙です、自転車の音が近づいてきました。 「ょねさん、よねさん」 と呼びかける声が聞こえます。 私は**ヨネさん**ではないので、人違いですと答えようと振り返ります。 日に焼けた肌に明るい茶髪の、にーちゃんとでも呼ぶべき赤いカッパの男性が自転車で追ってきていました。 「ねね、連絡先交換しませんか?」 おや、知り合いにかける言葉ではありません。 インタビューのためにナンパ連絡先交換用の捨てメアドでも作っておくべきでした。断りましたが、年齢だとか仕事帰りかとか聞いてきます。 「家近いんですか?」 「はあ、まあ…」 近いどころではありません。我が家は20m先まで迫っています。私は我が家に視線を向けないようにしました。 「じゃあまた会うかもしれないんで、**次会えたら**交換してくださいよ!」 本当にあり得ることを仮定するのはやめましょう。 「じゃ!また!」 赤い合羽が遠くなっていきます。それ以降、あの赤い合羽を再び目にすることはありませんでした。今はまだ。 よく考えると「ヨネさん」ではなく「お姉さん」だったんでしょうね。多分私の方が年下です。 ## おわりに これからも色々な方と出会えると面白いですね。 明日はみゅーくんの記事です。
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