# お絵描きマンから見た「けいおん!」の魅力 > この記事は[デジクリアドベントカレンダー2019](https://adventar.org/calendars/4266)の15日目の記事です。 > デジクリに関しては[こちら](https://digicre.net/)をご参照ください。 ## 目次 1. はじめに 2. けいおん! とは 3. お絵描きマンから見た「けいおん!」 4. まとめ 5. 布教 ## 1.はじめに  こんにちは、デジクリで筋トレを推進しているお絵描きマンです。アドベントカレンダーということで、何の記事を書くか非常に悩んでしまいました。最近終えた同人誌の入稿の話をするか、[筋トレ](https://www.youtube.com/watch?v=WndOChZSjTk&t=1s)を勧める話をするか、「[やがて君になる](https://dengekidaioh.jp/product/yagate/)」の話をするか、それとも昨日劇場で観た[映画](https://frag-time.com/)の話をするか。悩んだ末に来年1月に立川でリバイバル上映が予定されている、アニメ「けいおん!」の話をCG班的視点からしていくことました。私自身「けいおん!」をすべて観終えたのはつい最近なので、まだまだ新鮮な感覚でこの記事を書いています。 ## 2. けいおん! とは ### シリーズ概要 ![](https://i.imgur.com/D61h0gi.jpg)  まんがタイムきらら及びまんがタイムきららキャラットにて、かきふらい氏が連載していた漫画を原作としたTVアニメ。部員わずか5人の小さな軽音部の何気ない日常を、それぞれのキャラクターの成長と共に描いていく作品。  軽音が題材にはなっているが、軽音そのものが詳しく表現される描写は少なく、あくまでキャラクターを主体として物語が構成されているのが特徴。 とりあえずすごいいい作品 日常作品の偏見は捨てて観よう 制作:京都アニメーション 監督:山田尚子 / シリーズ構成:吉田玲子 / キャラクターデザイン:堀口悠紀子 / 美術:田村せいき / 色彩設計:竹田明代 / 音楽:百石元 主なキャスト:豊崎愛生 日笠陽子 佐藤聡美 寿美菜子 竹達彩奈 ### 第一期 ![](https://i.imgur.com/QCjcI3S.png) 2009年4月から放送 全12話+番外編2話  主人公の平沢唯の入学から2年生の文化祭ライブまでが描かれる。物語は唯を主軸に「なにかに没頭すること」により新しい自分を見つけていく、という成長ドラマで構成されている。一期では作中に音楽用語が登場したりするなど、ちょっとしたバンド要素も意外と登場する。 とても良い ### 第二期 ![](https://i.imgur.com/7Dh3Ixg.png) 2010年4月から放送 全24話+番外編3話  唯が3年生になったところから卒業する時点までが描かれる。一期よりも話数が多いため、一人ひとりのキャラクターの魅力が余すところなく表現されている。また、一期とは雰囲気が少し違い、音楽的な要素が少な目になっている。練習やライブはするものの、一般的なバンドにありがちなメンバー衝突やストレスがうまく排除されている。  主人公は第一期と同じ平沢唯ではあるが、第二期は部活で唯一の2年生である中野梓の心情をメインに物語が進んでいる。梓の視点に立って二期を観ると、非常に感慨深い。 最高 ### 劇場版![](https://i.imgur.com/xrTM9ST.jpg) 2011年12月に公開  軽音部のメンバーが卒業旅行に行く話。一期とも二期とも少し雰囲気が異なり、独特な高揚と哀愁がある。ロンドンの様々な名所をあっさりと通り過ぎるあたり、主体はあくまで彼女たちであるという制作側のこだわりを感じる。劇場版の公開は第二期放送後すぐに発表された。そのため第二期の終盤では劇場版の伏線が数多く用意されており、繰り返し観たくなる。本当に芸が細かい。 最後にして最高の完結 ## 3. お絵描きマンから見た 「けいおん!」 ### 「けいおん!」の魅力とは 作品紹介はこのくらいにして、ここからは本題にはいっていきたいと思います。  みなさん知ってのとおり、この作品は数多の人間を沼に沈め、虜にしています。その魅力はストーリー性やキャラクターの魅力、音楽のよさなど多岐にわたります。そんな中で、今回はデジクリのCG班的視点から考察した良さ、つまりは視覚的な「けいおん!」の魅力を考えます。なぜ「けいおん!」を良いと感じるのか、その理由に視覚的観点から迫っていきます。 ### ケレン味 丁寧な雑さ #### アニメのケレン味 まず話したいのはこちらの話。アニメーションというのは複数の絵を連続で流して、あたかも動いているように見せます。枚数が多ければ多いほど動きは滑らかになり、よりリアルに近づいていきます。しかし、リアルに近づけることがアニメとして唯一の正解というわけではありません。「けいおん!」を細かくみていくと、不思議なことに枚数は少ないのです。 こちらをご覧ください。 ![](https://i.imgur.com/y3S1WYm.gif) 一期のOPより  ギターを弾く唯ですが、とてもよく動いています。しかし、右手の動きは一回の縦の動きで二枚しか使われていないのです。言われてみると枚数の少なさによる粗さが分かるかもしれません。この粗さをアニメーション用語では、いい意味で「ケレン味」呼んだりします。  ディズニーやアメコミなど、アメリカのアニメでは作画枚数がとにかく多く、とても滑らかに動きます。彼らはよりリアルな動きを目指しているのかもしれません。対して「けいおん!」のようなアニメでは、リアルではなくアニメだからこそできる独自のアニメらしさを表現しているのだと私は思います。  そしてそれが最高にいいという話でした。 ![](https://i.imgur.com/Tyk1rT8.gif) 一周わずか5枚で構成されます ちょっとカクカクしてるのがアニメらしくて好きです ヌルヌル動くだけがアニメじゃないぜ #### 引きの表現 デフォルメ  ケレン味とは少し違いますが、「けいおん!」では引きの表現にて、キャラクターが簡略化されます。当然といえば当然ですが、アニメではキャラが遠方にいればいるほど、顔が描いてなかったり服のシワなどが少なかったりと、細部を省いた姿になります。しかしその省略の度合いは、作品によって違いがでてきます。 そんな中で「けいおん!」は引きでのキャラクターが、かなり省略されています。 ![](https://i.imgur.com/ryyXwb3.jpg)二期17話より 個人的に最も好きな回のひとつ 他のアニメとの比較です。 ![](https://i.imgur.com/nzIUhd0.jpg)P.A.WORKS制作 SHIROBAKOより 劇場版めっちゃ楽しみ カメラの位置が少し違いますが、同じくらいの距離感でも、「けいおん!」の方がより単純に見えます。これは「けいおん!」が距離感によってキャラクターをデフォルメしているからと考えられます。特に遠方のシーンではキャラクターの指の区別がなくなり、目も簡素になり顔の骨格も丸くなっています。敢えて細部を描かないという表現が、よりキャラクターを際立たせ、かわいいと感じさせるのかもしれません。 ![](https://i.imgur.com/RFC4ayu.jpg)情報量が少な目ですね だがそれがいい ### やわらかいキャラクターデザイン こっちを先に話すべきだったかもしれませんね。 「けいおん!」のキャラデザは一般的に見えるかもしれませんが、しっかりと観察すると他とはかなりの違いがあります。 ![](https://i.imgur.com/K2VIRdK.gif)        ![](https://i.imgur.com/v18uFFB.jpg)![](https://i.imgur.com/BR8I8fU.png) 左上が「けいおん!」の秋山澪、右上が「ゆるキャンΔ」の志摩リン、左下が「ご注文はうさぎですか?」の天々座理世です。全部きらら作品じゃねえか……。 頭身が近いので比較対象にしてみましたが、これだけでも違いがわかると思います。「けいおん!」のキャラデザは全体的にリアルさのあるキャラデザになっています。極端に言えば少しダサいデザインですね。  ボディラインがやわらかくなっていて、同角度からみたときの面積が大きめです。特に足まわりが大きめです。そのため、他のキャラデザに比べて少し太めに見えますが(他のキャラクターが細すぎる)、これは低めの頭身でも違和感のない程度にリアルさを考えた結果だと思われます。また、腰の位置も他作品と比べると特に低めになっています(つまり足が短い)。  私個人では、このようなキャラデザになっていると、デザインに受け入れ安さがでると考えています。今紹介した特徴は、総じてサブカルにおける一般的な魅力を逆向きに取り入れたものになっています。これにより、キャラを極端に女性的にしたときに生じる「エロい」という考えができにくくなります。キャラクターの要素の一つになりうる「エロさ」を排除することによって、そのキャラに対する魅力を考察する選択肢が広くなるという良さがあります。事実「けいおん!」のキャラの魅力を考えると「エロい」ではなく「かわいい」が出てきます。 ### 一枚絵として"絵になる"描写 さらなる「けいおん!」の魅力のひとつに、一枚絵としての化けるよさがあります。  劇中では様々なカメラワークによって彼女たちが写されていきますが、一つひとつの描写を切り取ったとき、その一枚が「イラスト」として完成するほど丁寧につくられています。以下にいくつか例をあげて、ざっくりとした解説をしていきます。 ![](https://i.imgur.com/eLDiyAk.jpg) 17話のシーンふたたび > このシーンでは席奥側にいる三人の後ろに、茶色いラインが入っています。これによって線と三人によって交点が生まれ視線がいきやすくなります。また手前側に木の建築部材が描いてあります。キャラクターの手前側にある背景を前景と呼びますが、これがあると奥行がうまれ、空間らしさがうまれます。 ![](https://i.imgur.com/0s47xJW.png)二期16話より 梓カップリング総当たり回 > このシーンでは特に目立ったものはあるませんが、おそらくは真ん中の律に視線がいくと思われます。というのも五人の顔の配置がちょうど凹型になっているからです。わざわざ身長の高い紬を右はじに置くのは偶然ではないはず。 > ![](https://i.imgur.com/korvOs8.jpg)キリっ ![](https://i.imgur.com/6MfPUiU.jpg) > 美しい遠近感だ……。ツインテールの人は遠方における存在感が半端ないですね。梓がいるからこそこの構図にしたのかもしれません。ちなみにたいていの廊下のシーンではこのシーンのように差し込む光が描かれています。もちろん夕方のシーンはよく映えますね。 ここであげたシーンは特に名シーンというわけではなく、いたって日常的な部分です。そんなシーンですらこの丁寧さですから、見せ場のシーンなんかはさらにエモいものになっています。 ## 4. まとめ いかがだったでしょうか、ストーリーや音楽ではなくあくまで視覚といことで書いてみました。色彩などの話もしたかったのですが、知識と時間が足りないようで、今回は割愛してしまいました。今回たくさんは紹介できませんでしたが少しでも「けいおん!」の魅力が伝わったらと思います。昔観ていた人は、また観返してみれば新たな発見があるかもしれません。そしてまだ観たことない人は、ぜひこの機会に観ていただければと思います。そして二期や劇場版を観ていない人、ぜひ観ましょう。必ずあなたを満足させるはず。 今年は京都アニメーションのファンにとって思うところがいろいろあるとは思います。しかしだからこそ、好きなものは人に伝えて、作品とその情熱を共有していこうと私は思います。拙い文章ではありましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。 ## 5. 布教 布教です、蛇足なので軽くみていってくだされ。 #### 映画けいおん! 立川シネマシティにて極上音響上映! 1/3(金)-9(木),1/17(金)-23(木)の日程で「映画けいおん!」のリバイバル上映が行われます。この機を逃すと「映画けいおん!」を劇場で観る機会はなくなっていまうかもしれません。特に「けいおん!」は音が重要な作品でもあるので、映画館での上映は大きな意味があります。ぜひ行きましょう。 > おなじみ《京アニ×シネマシティ》、鶴岡音響監督立ち会いの音響調整で贈る、至上の京アニ体験。あの伝説の上映がさらにクオリティを増して甦る。併せて『たまこラブストーリー』『響け!ユーフォニアム』TV版全話も上映。 https://res.cinemacity.co.jp/TicketReserver/studio/movie/1857 #### やがて君なる完結! 最高 これ以上の言葉はいらない #### 映画 フラグタイム 上映中! ![](https://i.imgur.com/vPuz1OK.jpg) さと氏による単行本2巻分の百合(議論中)漫画がアニメ映画化されたものが、期間限定で公開中。私も昨日劇場で鑑賞してきました。上映時間わずか60分の中でありなが、非常に濃厚なストーリーで味わい深かったです。誌的で淡い表現が終始劇場を別の世界へ飛ばしてるようで、久々に異界にいる気分が味わえました。 とまあそれはさておきこのアニメ、なんと元請け会社が失踪しているらしく、円盤が発売されなくなると噂されています。なんてことだ……。 https://frag-time.com/