## 2022/06/3 ## Orthogonal Chirp Division Multiplexing for Underwater Acoustic Communication === ## 1 Abstract * 直交チャープ分割多重(OCDM)に基づく新しい水中音響通信(UWAC)システムを調査 * OCDMはチャープを用い、周波数フェージングに優れる * UWACのためのOCDM実装を説明 * 水槽実験、水中チャネル(シミュレーション)で性能をOFDMと比較 ## 2 Reference [1][2][3][4]: 水中音響通信のレビュー [5][6]: 水中音響通信でのチャープスペクトラム拡散 [7][8][9]: UWACでのターボ等化 [9][10]: ターボ等化(周波数領域) [11]: マルチキャリア通信(OFDMのレビュー) [12]: UWACでのOFDMのドップラー緩和 [13]: 書籍。恐らく引用目的は[12]と同じ [14]: OCDM [15]: フレネル変換とその性質 [16]: UWACでのOCDM [17]: デジタル通信システムの書籍。チャネル遅延スプレッド [18]: watermark [19]: UWACでのシミュレーション [20]: ターボ等化、反復型FDE ## 3 Introduction * UWACは軍事から商業、科学目的まで様々な用途で利用されているが、時間変化、環境雑音、帯域幅、マルチパスなどのチャネルの厳しい特性によりデータ伝送は困難 * チャープスペクトラム拡散(CSS)がUWACに対し有効。スペクトル効率を犠牲にしながらも高い信頼性を有し、低データレートでのUWACに適する * 90年代にはデータレート最適化のために位相シフトキーイング(PSK)および直交振幅変調(QAM)が研究される。高スペクトル効率だが、時間変化や位相歪みに対応したチャネルインパルス応答(CIR)の等化が必要となり、受信機が複雑に。現在は時間、周波数領域のターボ等化アルゴリズムが好まれる。 * 1タップ等化器でのデータレート向上のため、UWACでのOFDM利用も研究される。高データレートだが、ドップラーによりサブキャリアの直交性が崩れ、キャリア間干渉(ISI)の影響を受けやすく、高度な補償アルゴリズムが必要 * 光ファイバーの分野で、複数のチャープ波形を多重化するOCDMの導入。高データレートで、フレネル変換による直交した波形の多重化がOFDMと類似 * UWACでOCDMを使用する実験が行われたが、結果はUWACチャネルでのシミュレーションに限定。 * この研究では[16]の実験をより現実的なチャネルに拡張し、OCDMシステムの実現可能性、OFDMに対する優位性を説明する。 ## 4 OCDM Basics ### 4.1 Principle of OCDM [14]では直交チャープ波形の集合によりOCDMを表している。$ψ_n(t)$ をチャープ波数 $n∈[0,N-1]$ の波形の集合とすると、以下のようになる。 $$ \psi_{n}(t)=e^{j \frac{\pi}{T}} e^{-j \pi \frac{N}{T^{2}}\left(t-n \frac{T}{N}\right)^{2}}, t \in[0, T] \tag1 $$ 図1は16個のチャープ波形の例で、実部が実線、虚部が破線である。式(1)のチャープ波形の直交性は明らかである。 $$ \int_{0}^{T} \psi_{m}^{*}(t) \psi_{n}(t) d t=\int_{0}^{T} e^{j \pi \frac{N}{T^{2}}\left(t-m \frac{T}{N}\right)^{2}} e^{-j \pi \frac{N}{T^{2}}\left(t-n \frac{T}{N}\right)^{2}} d t=\left\{\begin{array}{ll} 1 & \text { if } m=n \\ 0 & \text { instead } \end{array}\right. \tag2 $$ ![](https://i.imgur.com/zl7lJTR.png) Figure1. OCDM chirp waveform for $N=16$ 時間領域で$s_k(t)$とラベル付けされた$k$ブロック目の送信信号は、QAMシンボル$x^k_n$を$N$個の波形を時間$T$の間で多重化することで得られる $$ s_{k}(t)=\sum_{n=0}^{N-1} x_{n}^{k} \psi_{n}(t), t \in[0, T] \tag3 $$ OFDMと同様に、(2)の直交性を用いて、受信信号$r_k(t)$からシンボルを復元する。 $$ \hat{x}_{n}^{k}=\int_{0}^{T} r_{k}(t) \psi_{n}^{*}(t) d t \tag4 $$ ### 4.2 OCDM in Matrix Form 式(3)(4)はアナログ信号における基本概念であり、離散信号の場合は離散フレネル変換(DFnT)を用いる。(3)のシンボルを周期$T$の間で$N$個サンプリングしたときの$m$番目の値は $$ s_{m}^{k}=s_{k}(t)_{t=m \frac{T}{N}}=\sum_{n=0}^{N-1} x_{n}^{k} \psi_{n}(m T / N)=e^{j \frac{\pi}{4}} \sum_{n=0}^{N-1} x_{n}^{k} e^{-j \frac{\pi}{N}(m-n)^{2}} \tag5 $$ 上式を簡素な行列式で表すと $$ \mathbf{s}_{k}=\boldsymbol{\Phi}^{H} \mathbf{x}_{k} \tag6 $$ このとき$\mathbf{s_k}=[s_0^k...s_{N-1}^k]^T$, $\mathbf{x_k}=[x_0^k...x_{N-1}^k]^T$, $\mathbf{\Phi}$は偶数$N$に対して以下のように定義されるDFnT行列である。 $$ {\boldsymbol{\Phi}_{m, n}}=\frac{1}{\sqrt{N}} e^{-i \frac{\pi}{4}} e^{i \frac{\pi}{N}(m-n)^{2}} \tag7 $$ 復調は以下のようにDFnT演算を行う $$ \hat{\mathbf{x}}_{k}=\boldsymbol{\Phi s}_{k} \tag8 $$ ### 4.3 Underloaded OCDM System アンダーロードOCDMとは、波形の数$N$よる小さい$N_u$個のシンボルを変調する手法である。データのベクトル$\mathbf{x_k}$は以下の式で表される ![](https://i.imgur.com/qNT7fgl.png) 簡単のため、$N$は$N_u$の整数倍とする。例えば、$N_u=\frac{1}{2}N$のとき、元の半分のシンボルを変調することとなる。係数は、信号エネルギーを同じにするためのものである。セクション4で示すが、アンダーロードOCDMは信号対雑音比(SNR)の性能が向上するが、データレートが犠牲となる。 ## 5 System Model ### 5.1 Transmission Structure 情報データ$d_n$は符号化レート1/2、状態数64の畳み込み符号により符号化。QAM変調されたシンボルは図2のように配置される。$N_d$個のデータシンボルに、フレーム同期とドップラー推定のためのPNプリアンブル系列、チャネル推定用のパイロットシンボル、シンボル間干渉(ISI)を避けるためのCPを加えて送信する。CP長$N_{CP}=NR_{CP}$は最大チャネル遅延時間により設定。送信シンボルは $E[|x_n^k|^2]=1$となるよう電力規格化。 ![](https://i.imgur.com/f91UQEw.png) Figure 2. Frame structure ### 5.2 Experimental Channels 静的チャネルと、実海域音響伝送の再現チャネルでシミュレーションを行う。CP長はチャネル遅延広がりより長く設定。 ### 5.2.1 Water Tank 静的チャネル実験は、L@bisen Yncréa-Ouest (Brest, France) の敷地内にある水槽 $(2m×1m×1m)$ で行った。送信側にはNeptune Sonar Limited (Kelk, United Kingdom) D/26を、受信側にはBrüel & Kjaer (Nærum, Denmark) 8104ハイドロホンを使用した。チャネルパラメータを表1に、推定CIRを図4aに示す。 ![](https://i.imgur.com/tBoDe2e.jpg) Figure 3. Experimental water tank ![](https://i.imgur.com/hED8CFp.png) Figure 4. Channel impulse response for tank and NOF1 channels, the cyclic prefix tolerance as the dotted line. table 1. Channel parameters ![](https://i.imgur.com/siQN98h.png) ### 5.2.2 Watermark NOF1 Channel 実際の水中チャネルを想定したシミュレーションを行うために、UWACのシミュレーションツールWatermark channel[18]を用いる。シミュレータの原理は、入力波形を測定されたチャネルで畳み込むことで歪ませることである。[19] ![](https://i.imgur.com/fMJhTaB.png) ここで、$s(t)$は入力信号、$\hat{h}(t;τ)$は記録された時間変動インパルス応答(TVIR)推定値、$n(t)$はノイズ、$r(t)$は歪んだ出力信号である。 この論文で選択したwatermarkチャネルは、NOF1(Norway-OsloFjord)、信号範囲750m、水深10mである。プリアンブルシーケンスから推定されたNOF1 CIRを図4bに、また基本パラメータを表1に示す。 ### 5.2.3 Decoding Structure 本研究で検討した復号処理構造は、主に[14]で紹介された復号器アーキテクチャをベースに、UWACドップラー処理とチャネル復号ブロックを追加したものである。図 5 に復号器の全体概略フローチャートを示す。ベースバンド変換後、受信ストリームと PN シーケンスの相互相関によりフレーム同期を行い、ドップラーシフトを推定し、リサンプリングと位相補正により補正を行う[12]。 直列-並列変換とCP除去の後、各ブロック$k$について、ベクトル$\mathbf{r_k}$が得られる。UWACチャネルがもたらすマルチパス効果を除去するために、$\mathbf{r_k}$に高速フーリエ変換(FFT)を適用して周波数領域等化(FDE)を発動し、ベクトル$\mathbf{y_k}$を得る。この操作は以下のように表現される[14]。 ![](https://i.imgur.com/XG8Ao3F.png) ここで、$\mathbf{F}$ はサイズ$N$のFFT行列、$\mathbf{\Gamma}$と$\mathbf{\Lambda}$はともにサイズ$N×N$の対角行列である。Nが偶数のとき、 ![](https://i.imgur.com/UNYSRTY.png) ここで、$H_n$はチャネルの周波数応答(CFR)である。さらに、$\mathbf{w_k}$はゼロ平均と分散$σ^2_w$のガウス分布に従うノイズベクトルである。 ![](https://i.imgur.com/PY15N8S.png) Figure 5. Decoder structure CFRが一定であるという仮定の下で、送信ベクトルの推定は、CFRと行列Γによって引き起こされる位相回転を補償し、逆FFTを介して時間領域へ転送することによって以下のように形成することができる。 ![](https://i.imgur.com/kV9PZ52.png) ここで、$\mathbf{G}$ は最小平均二乗誤差(MMSE)基準で最適化された対角等化行列であり、次のようになる。 ![](https://i.imgur.com/VG3PFR4.png) 実際には、等化行列はパイロットシンボルから得られるCFRの推定値から計算される。 そして、等化された信号内のドップラーシフトを補償するために、次のような微細な位相補正段階が適用される。 ![](https://i.imgur.com/qR5CGGh.png) ドップラー位相シフト$\hat{\phi}_d$の推定は、各フレームの開始時にゼロに初期化され、以前の推定値と最も近いコンスタレーションポイント間の平均位相回転を測定することにより、各OCDMブロックについて更新される。 ![](https://i.imgur.com/Jp9lNu8.png) ここで、$\mathrm{Dec(.)}$はQAMコンスタレーションから最も近い複素セルを選択するアルゴリズムである。 最後にQAM、FECの復調を行い、元のデータを復元する。 送信側と受信側を合わせると、OFDMと比較して1シンボルあたり2+0.5log2Nの複雑性が加わる。[14]。 ## 6 Results ### 6.1 System Paraneters このセクションでは、静的および動的 UWAC チャネル上で従来の OFDM システムと OCDM の性能を比較する。評価は3つの性能指標に基づいて行われる。$x^k_n$と$\hat{x}^k_n$間の平均二乗誤差(MSE)、ビタビ復号後のビット誤り率(BER)、有効データレート(EDR)であり、これらは次のように定義される。 ![](https://i.imgur.com/voC2BZP.png) ここで、PER(Packet Error Ratio)は、全送信フレームに対する誤りフレームの割合を示し(フレームは1ビットが適切に復号されないと誤り)、ローデータレート$D_r$は次のように定義される。 ![](https://i.imgur.com/ptUQRIR.png) 水槽実験とwatermark NOF1チャネル実験のシステムパラメータを表2にまとめる。このとき、$D_r=\frac{3}{5}\frac{N_u}{N}B$である table 2 System parameters ![](https://i.imgur.com/IxiFPKT.png) ### 6.2 Water Tank Channel 水槽実験では、静的なシナリオで従来のOFDMに対するOCDMの性能を比較した。ドップラーの影響は観測されなかったが、水槽中での多重反射により、広範なマルチパス効果が得られた。図6a,bにMSEとBERをプロットした。さらに、性能の下限を示すためにAWGNチャネルでの性能を描画した。 * OFDMと比較したOCDMのMSE性能の向上 * OCDMのBER向上 * $N$を小さくすることでBER増加 $N_{CP}$が一定なので、$N$を小さくするとCP時間が短縮される。このことからOCDMの優れたGI耐性がわかる。この性能向上は、OCDMの時間、周波数ダイバーシティ活用によると説明される。 ![](https://i.imgur.com/8kaRRxq.png) アンダーロードでのBER, EDRを図7a,bに示す * $N_u/N=1/2$でOCDMのBERがOFDMより大きく改善 * ハーフロードOCDMのEDRは7dBから最大に アンダーロードOCDMのスペクトル拡散が性能向上の要因とされる。EDR曲線から、低SNRでのロバスト性が実証された。 ![](https://i.imgur.com/WYMpZmX.png) ### 6.3 Watermark NOF1 Channel OFDMとOCDMをWatermark NOF1チャネルで比較する。NOF1チャネルは水槽と比較して時間変化が激しく、ドップラーシフト、ドップラー拡散の影響がもたらされる。 ベンチマークとして、反復型FDEを用いたSC-FDEシステムの性能を提供した。等化にFDEを用いることでOCDMとの比較を可能な限り公平にした。この論文では、MMSE基準で最適化されたフィードフォワード線形等化器とフィードバック干渉キャンセラを実装した(詳細は[9])。 図 8a,bに、OCDM,OFDM,SC-FDEシステムのBERおよびPERを示す。 * フルロードではOFDMがOCDMより、 SC-FDEがOFDMより優れる * 低負荷でのOCDMのBERは低SNRで大幅改善 * 低負荷OFDMのBER改善はわずか * EDRは高SNRでSC-FDEが他を上回る * 低SNRでのEDRは低負荷OCDMが他より高い フルロードOCDMの性能低下は、MMSE等でのノイズ増加が理由として挙げられる。SC-FDEはISI、ドップラーに耐性を持つが、等化処理と複合で計算が複雑化する[20]。OFDMはアンダーロードによる恩恵がキャリアスペース増加のみだったため、性能改善がOCDMほどでなかったと説明される。OCDMの低SNRでのEDRがSC-FDEより優れることから、ロバストなUWACのためのアプローチとして有効である。また、SC-FDEと同様のターボ等化によりOCDMの性能が改善される可能性も存在するため、SC-FDEの優位性は緩和されるかもしれない。 ![](https://i.imgur.com/ByANZvJ.png) ![](https://i.imgur.com/imAoF2J.png) ## 7. 結論 本論文の目的は、直交チャープ波形の集合を用いて情報データを伝送するOCDMのUWACでの実現可能性を評価することである。異なるUWACチャネルにおける従来のOFDMおよびSCシステムとの性能比較では、フルロードでは、OCDMの強化は明白ではないことが証明されたが、低負荷構成において、OCDMシステムは従来のOFDMよりも明らかに優れており、また反復FDEを用いたSCシステムよりも優れていることが実証された。OCDMはロバストなUWACアプリケーションにとって興味深い技術であることが示された。